平成22年台風第11号(へいせい22ねんたいふうだい11ごう、アジア名:Fanapi)は、2010年9月に発生し、台湾や華南地方に大きな被害をもたらした台風である。
概要
2010年9月15日に、沖縄地方の南で台風11号が発生し、アジア名「ファナピ(Fanapi)」と命名された[1][2]。命名国はミクロネシアで、「サンゴ礁を形成する小さな島々」を意味する[3]。また、フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)はこの台風について、フィリピン名「インダイ(Inday)」と命名している。台風は勢力を強めながら暴風域を伴い、18日にはゆっくりと先島諸島へ接近し、暴風域に巻き込んだ[4][5][6]。そして、非常に強い勢力で19日午前8時40分(現地時間)に、台湾中部の花蓮市付近に上陸した後[2][7]、台湾海峡を経て中国福建省に再上陸し、その後熱帯低気圧に変わった[8][1]。
影響・被害
台風が接近した沖縄県では各地で暴風となり、波照間空港で63.8 m/s、西表島南部で60.4m/sの最大瞬間風速を観測したほか、八重山地方では全世帯の約半分が停電した[3]。県内で死者は出なかったものの、5人が負傷した[1]。宮古島市の城辺にあるサトウキビ畑では、台風による塩害で葉の枯れる被害が出た[9]。
台湾では、台風によって台南県から屏東県にかけての広い範囲で浸水被害が広がり、高雄市の被害は「過去50年で最悪」と伝えられた[10]。台風による大雨により、高雄県仁大工業区で、台湾塑膠工業(フォルモサ・プラスチックス)など10社以上が操業ストップを余儀なくされ、これを受けて、台湾中油も当面の需要低下懸念から、川上の第5ナフサ分解プラント(高雄市楠梓区、通称五軽)の稼働を中断[10]。石化サプライチェーンの混乱による被害額は、およそ20億台湾元(およそ54億円)と見込まれている。なお、中油は稼働停止が1週間以上続いた場合、石化製品の供給不足により、スポット価格の上昇を招くと懸念した[10]。中央気象局によれば、18日午前0時から20日午前11時までの降水量は、屏東県瑪家郷で1,126mm、高雄県岡山鎮で945mm、高雄市左営区で596mmで、20日昼になっても多くの地点で水が引かず、水害被災地では国軍の兵士4,400人が出動し、復旧活動に当たった[10]。
中国広東省では、洪水や地すべり、泥流などにより多数の死傷者が出た[11]。
この台風により、合計で105人の死者が出た。
その他
この台風のアジア名である「ファナピ(Fanapi)」は、この台風限りで使用中止となり、次順からは「ライ(Rai)」というアジア名が使用されることになった。
脚注
- ^ a b c “2010年 台風第11号 (Fanapi)”. tydb.bosai.go.jp. 2020年6月1日閲覧。
- ^ a b “台風11号、台湾で暴風11人けが”. www.afpbb.com. 2020年6月1日閲覧。
- ^ a b “デジタル台風:2010年台風11号(ファナピ|FANAPI)”. agora.ex.nii.ac.jp. 2020年4月22日閲覧。
- ^ “台風11号、石垣島あす暴風域か”. 八重山毎日新聞社. 2020年6月1日閲覧。
- ^ 日本テレビ. “台風11号 宮古島が暴風域に|日テレNEWS24”. 日テレNEWS24. 2020年6月1日閲覧。
- ^ “台風11号、西へ 石垣島が暴風域に”. 日本経済新聞 電子版. 2020年6月1日閲覧。
- ^ “台風11号、台湾で暴風11人けが”. www.afpbb.com. 2020年4月22日閲覧。
- ^ “デジタル台風:台風201011号 (FANAPI) - 詳細経路情報(Google Maps版)”. agora.ex.nii.ac.jp. 2020年4月22日閲覧。
- ^ “東南海岸一帯で塩害/台風11号影響 | 宮古毎日新聞社ホームページ -宮古島の最新ニュースが満載!-”. www.miyakomainichi.com. 2020年6月1日閲覧。
- ^ a b c d “台風11号、南部石化産業に打撃”. 台湾ビジネスのコンサル、リサーチ、ニュース | ワイズコンサルティング@台湾 (2010年9月20日). 2020年6月1日閲覧。
- ^ “Asian Disaster Reduction Center(ADRC)”. www.adrc.asia. 2020年6月1日閲覧。