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上場廃止

上場廃止(じょうじょうはいし)とは、上場により取引所の開設する市場における売買の対象であった株式債券などについて市場の売買対象から除外すること[1]

概説

上場廃止の大まかな事由として、上場契約違反、法人格消滅(合併を含む)、完全親会社設立(完全子会社化)、会社の倒産(経営破綻)などがある。また、上場企業が上場のメリットが小さくなったと判断して自主的に株式上場廃止申請を行う場合もある。

これらのうち有価証券報告書等の虚偽記載など上場会社規律に係わる基準に抵触する事案の上場廃止の性格については、規律違反に対する懲罰であるとする懲罰説と品質管理の点から行われるとする品質管理説の対立がある[1]

上場の廃止により取引所での売買はできなくなるため流動性は低下し、市場価格がなくなるため適正価格の把握が困難になるといった副次的な影響がある[1]

株式の上場廃止の場合、会社側から見ると、株主構成の変動可能性は小さくなるほか、流通市場が縮小化するため資金調達への影響が出たり、上場会社としてのステータスが失われるといった影響が出ることが考えられる[1]。株主や投資者側から見ると、上場廃止により保有株式の換金可能性は低下するほか、取引所の終値がなくなるため株式の評価の方法に影響を及ぼす[1]。また、機関投資家の運用対象から外れたり、一般投資家の場合には証券会社による勧誘が制約され投資機会が制限されることがある[1]。一般社会の見方としても、その会社の価値が、上場市場名、株式の価値で示せないこともあって、「信用の低下」、「社会から閉ざされた」、(その理由によっては)「情けない」、「堕ちた」等といった印象を生む。

なお、株式に譲渡制限を設けることを株式の非公開化という[2]。上場は取引所で売買対象となることであり、上場が廃止されてもその会社の株式等の売買が一切できなくなるわけではない[1]。非上場となった株式会社が株式の譲渡そのものを制限するためには定款変更といった一定の手続が必要になる[3]。一方、上場会社が定款変更により株式の譲渡制限を設けることとした場合には、不特定多数による市場での売買とは相容れないこととなるため上場規程等で原則として上場廃止の対象とされている[1]

東京証券取引所・名古屋証券取引所における上場廃止

ここでは上場維持基準が導入されている東京証券取引所名古屋証券取引所における上場廃止について記述する。

上場維持基準

2022年4月4日に施行された東京証券取引所新市場発足並びに名古屋証券取引所における市場名変更後は、上場廃止基準を見直した上場維持基準が新設された。この内、東京証券取引所プライム市場並びに名古屋証券取引所プレミア市場では、株主数800人以上(東証一部では400人未満、名証一部では150人未満)、流通株式数20,000単位以上(東証一部では2,000単位未満、名証一部では1,000単位未満)、流通株式比率35%以上(東証一部・名証一部共5%未満)にそれぞれ大幅に引き上げられた他、東京証券取引所スタンダード市場では、株主数400人以上(東証二部では400人未満、JASDAQスタンダードでは150人未満)、流通株式数2,000単位以上(東証二部では2,000単位未満、JASDAQスタンダードでは500単位未満)、流通株式比率25%以上(東証二部では5%未満、JASDAQスタンダードでは流通株式比率による上場廃止はなし)に引き上げられた[4][5]

東京証券取引所では、株主数、流通株式、時価総額、純資産の額において上場維持基準に抵触した場合、抵触した会計年度の1年後に監理銘柄(確認中)に指定され、基準に適合しなかった場合は上場廃止となる[4][6]。上場維持基準に抵触したために市場変更を希望する場合は、現在の市場区分における改善期間の最終日までに市場区分の新規上場申請手続及び新規上場審査と同様の変更申請を行わなければならない(改善期間の最終日までに審査が完了しなかった場合は、審査完了までの間監理銘柄に指定される)[6]。東証グロース上場企業において、テクニカル上場した企業においては、当該上場企業を上場廃止となった企業と同一のものとみなされ、上場期間が引き継がれる。

東京証券取引所では、上場維持基準に抵触した場合は、事業年度末日から3か月以内に適合計画を開示しなければならない。また、訂正もしくは変更が行われた場合は速やかに開示しなければならない。

  • 株主数・流通株式数に関しては、事業年度末日の2か月後までに提出する分布状況表により上場維持基準に適合するかを判断する。上場維持基準に抵触した場合は、中間期末など、任意で分布状況表を提出する事が可能である。翌事業年度末日の当日に監理銘柄(確認中)に指定され、2か月後までに再提出する分布状況表によって、上場維持基準不適合となった場合は上場廃止となる。
  • 売買代金(東証プライムのみ)に関しては、毎年12月末日以前1年間における売買立会での金額を日次平均にした値で審査を行う。最終営業日時点で売買代金において上場維持基準不適合となった場合は上場廃止となる。
  • 売買高(東証スタンダード・東証グロースのみ)に関しては、毎年6月末日及び12月末日以前6か月間における売買立会での売買高を月次平均にした値で審査を行う。6月末日審査の場合は12月最終営業日時点で、12月末日審査の場合は翌年6月最終営業日時点で、それぞれ売買高において上場維持基準不適合となった場合は上場廃止となる。
  • 時価総額(上場から10年を経過した東証グロース上場企業のみ)に関しては、事業年度末日以前3か月間における売買立会における当該株券等の日々の最終価格の平均に、当該事業年度の末日における上場株券等の数を乗じて得た額で審査を行う。翌事業年度末日の当日に監理銘柄(確認中)に指定され、潜在株式により上場株式が未確定である場合は、上場株式を確定させた上で監理銘柄(確認中)に指定される。時価総額において上場維持基準不適合となった場合は上場廃止となる。

東京証券取引所における上場維持基準は以下の通りである。

上場維持基準 プライム スタンダード グロース 改善期間
株主数 800人以上 400人以上 150人以上 1年
流通株式数 20,000単位以上 2,000単位以上 1,000単位以上 1年
時価総額 - 上場から10年経過後40億円以上 1年
流通株式時価総額 100億円以上 10億円以上 5億円以上 1年
売買代金 1日平均売買代金2000万円以上 - 1年
売買高 - 月平均売買高10単位以上 6か月
流通株式比率 35%以上 25%以上 1年
純資産の額 純資産が正 1年

名古屋証券取引所は、プレミア市場上場企業が事業年度末日において上場維持基準を満たさず、改善期間中に改善がなされなかった上場企業の内、メイン市場の上場維持基準を満たしている場合は、メイン市場へ市場変更となる。プレミア市場上場企業がメイン市場の上場維持基準を満たしていなかったり、メイン市場上場企業並びにネクスト市場上場企業が事業年度末日において上場維持基準を満たさず、改善期間中に改善がなされなかった場合は上場廃止となる[5]

名古屋証券取引所では、時価総額において上場維持基準に抵触した場合は、事業年度末日から3か月以内に適合計画を開示しなければならない。

  • 売買高・値付率(値付率は名証ネクストのみ)に関しては、最近6か月(1月~6月、7月~12月)月平均売買高で審査を行う。6月末日審査の場合は12月最終営業日時点で、12月末日審査の場合は翌年6月最終営業日時点で、それぞれ売買高において上場維持基準不適合となった場合は上場廃止となる。名証ネクスト上場企業は、月平均値付率が20%未満となり、その後6カ月間の月平均売買高が10単位以上又は月平均値付率が20%以上にならなかった場合は上場廃止となる。
  • 時価総額に関しては、事業年度末日以前3か月間の平均時価総額で審査を行う。時価総額において上場維持基準不適合となった場合は、プレミア市場上場企業はメイン市場へ市場変更される他、プレミア市場上場企業がメイン市場の上場維持基準を満たしていなかったり、メイン市場上場企業並びにネクスト市場上場企業が上場維持基準を満たしていなかった場合は上場廃止となる。

名古屋証券取引所における上場維持基準は以下の通りである。

上場維持基準 プレミア メイン ネクスト 改善期間
株主数 800人以上 150人以上 1年
流通株式数 20,000単位以上 1,000単位以上 - 1年
時価総額 100億円以上 5億円以上 2億円以上 1年
売買高・値付率 月平均売買高40単位以上 月平均売買高3単位以上 月平均売買高10単位以上
又は値付率20%以上
6か月
流通株式比率 35%以上 10%以上 - 1年
個人株主所有割合 5%以上又は株主数2,000人以上 5%以上又は株主数300人以上 - 1年
業績 - 上場後4年目以降5年連続で営業利益及び営業活動による
キャッシュ・フローが負でないこと
(財務諸表等に
継続企業の前提に関する事項の注記
がなされた場合のみ)
1年
純資産の額 純資産が正 1年

債務超過に関しては、審査対象事業年度の末日以前3か月間の平均時価総額が1,000億円以上の場合(改善に向けた計画を適切に開示しているものに限る)と法的整理、事業再生ADR、私的整理に関するガイドライン(東京証券取引所のみ)、地域経済活性化支援機構の再生支援(名古屋証券取引所のみ)により債務超過でなくなることを計画している(いずれも取引所が適当と認める場合に限る)場合、東証グロース・名証ネクストは上場後3年間において純資産の額が正でない状態となった場合は上場廃止の対象外となる。

上場維持基準以外の上場廃止基準は以下の通りである。

  • 銀行取引の停止・破産手続・民事再生手続又は会社更生手続・事業活動の停止(いわゆる経営破綻)
  • 不適当な合併等(いわゆる裏口上場)・有価証券報告書又は半期報告書の提出遅延・虚偽記載または監査法人による不適正意見(監査意見の不表明)等・上場契約違反等・内部管理体制が改善されない等
  • 株式事務代行機関への委託契約解除・株式の譲渡制限・完全子会社化・指定保管振替機関における取扱いに係る同意の撤回・株主の権利の不当な制限・反社会的勢力の関与・全部取得・株式の併合・その他(公益・投資者保護)
  • 会社の解散

東京証券取引所における流通株式に関しては、以下の株式は流通株式として認められる。

  • 投資信託又は年金信託に組み入れられている株式
  • その他投資一任契約等に基づき投資として運用することを目的とする信託に組入れられている株式
  • 証券金融会社又は金融商品取引業者所有株式のうち信用取引に係る株式
  • 預託証券に係る預託機関名義の株式
  • 国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式に関しては、下記に該当する場合は流通株式に含める場合がある。
    • 直近の大量保有報告書等において、保有目的が「純投資」と記載され、なおかつ5年以内の売買実績が確認できる場合
    • 保有状況報告書が提出され、かつ保有目的が「純投資」と記載され、なおかつ5年以内の売買実績が確認できる場合

経過処置

2022年4月3日時点における東京証券取引所上場会社の内、以下の区分に該当し、かつ「上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出した会社は、当分の間緩和した上場維持基準(経過措置)を適用する[4]。但し、新市場区分の選択において新規上場審査と同様の審査を行ったり、手続移行後に市場変更[7]を行ったり、2022年4月4日時点で特設注意市場銘柄に指定されていたり、同日以降に特設注意市場銘柄に指定された場合は経過措置の対象外となる[6]。経過処置は、2022年12月31日時点で上場維持基準を満たしていない510社(プライム269社、スタンダード200社、グロース41社)に対して適用される[8][9][10]

2022年4月3日時点における東京証券取引所上場会社(特設注意市場銘柄は除く)で、上場維持基準に抵触した上場会社は、上場維持基準に適合するための取組み及びその実施時期を記載した計画の開示を行い、当該計画の進捗状況を事業年度末日から3か月以内に開示する場合に限り経過処置が継続適用される。売買高並びに純資産の額において上場維持基準に抵触した場合は、売買高は抵触した会計年度の6か月後に、純資産の額は抵触した会計年度の1年後に監理銘柄(確認中)に指定され、基準に適合しなかった場合は上場廃止となる。但し、上場後10年を経過したマザーズ上場会社が、2022年4月3日までに到来する事業年度末日までの3か月平均時価総額が5億円未満となった場合には、原則として、グロース市場の時価総額基準における改善期間に該当していたものとして取り扱う。

東京証券取引所は2023年1月25日、経過処置を2025年3月を以って終了する(経過措置の終了時期は決算期によって異なる)案を発表し[10][11]、2025年3月1日以降に到来する上場維持基準 の判定に関する基準日から本来の上場維持基準を適用する[12][13]

東京証券取引所上場会社は2025年3月1日以降、上場維持基準を満たさなかった場合1年間の改善期間に入り、改善されなかった場合は原則6か月間監理銘柄・整理銘柄に指定された後に上場廃止となる。但し、2023年3月31日時点において、2026年3月以後最初に到来する基準日を超える期限の計画を開示している上場企業については、明確な期限の定めがない中で策定された計画であることや、計画に基づき着実に進捗している上場企業もあることを踏まえ、計画期限における適合状況を確認するまで監理銘柄指定を継続する。経過処置を受けているプライム市場上場企業(2022年4月3日時点で東証一部に上場していた企業のみ、同年4月4日以降にプライム市場に新規上場した企業並びにプライム市場へ市場変更した上場企業は対象外)は、2023年4月1日から9月29日までは諸手続不要でスタンダード市場へ移行可能とし[10][11][12][13]、当該期間中にスタンダード市場への移行申請を行ったプライム上場企業は同年10月20日にスタンダード市場へ市場変更となる。但し、プライム市場上場企業が諸手続不要でスタンダード市場へ移行する際、スタンダード市場の上場維持基準に適合していない場合や、再選択に基づくスタンダード市場への変更後に上場維持基準に抵触した場合は、当該基準に適合するための適合計画を開示した場合に限り、経過措置の終了時期まで緩和した上場維持基準を適用する[12][13]

東京証券取引所上場会社における経過措置は以下の通りである。

移行日の前日における市場区分 移行日における市場区分
市場第一部 プライム市場
スタンダード市場
市場第二部
JASDAQスタンダード
スタンダード市場
マザーズ
JASDAQグロース
グロース市場
上場維持基準 プライム スタンダード グロース 改善期間
株主数 800人以上 150人以上 1年
流通株式数 10,000単位以上 500単位以上 1年
時価総額 - 上場から10年経過後5億円以上 1年
流通株式時価総額 10億円以上 2億5000万円以上 1年
売買高 月平均売買高40単位以上 月平均売買高10単位以上 6か月
流通株式比率 5%以上 なし
(抵触した時点で上場廃止)
純資産の額 純資産が正 1年

移行日の前日における名古屋証券取引所上場会社の内、プレミア市場並びにメイン市場上場会社も同様に当分の間緩和した上場維持基準(経過措置)を適用する[5][14]。但し、市場名変更後にメイン市場からプレミア市場へ市場変更を行ったり、2022年4月4日以降に特設注意市場銘柄に指定された場合は経過措置の対象外となる。

名古屋証券取引所上場会社における経過措置は以下の通りである。

市場名変更前日における市場区分 市場名変更後における市場区分
市場第一部 プレミア市場
市場第二部 メイン市場
上場維持基準 プレミア メイン 改善期間
株主数 800人以上 150人以上 1年
流通株式数 10,000単位以上 1,000単位以上 1年
時価総額 20億円以上 5億円以上 1年
売買高・値付率 月平均売買高40単位以上 月平均売買高3単位以上 6か月
流通株式比率 5%以上 なし
(抵触した時点で上場廃止)
個人株主所有割合 5%以上又は株主数2,000人以上 5%以上又は株主数300人以上 1年
純資産の額 純資産が正 原則1年

上場廃止が行われる場合

通常、上場廃止の恐れがある銘柄の株式は監理銘柄に、上場廃止が決定した銘柄の株式は整理銘柄に指定の上で取引されることになる。なお、株式公開買付け(TOB)ではなく、同一市場の上場会社同士の株式交換による完全子会社化・合併が行われる場合は、監理・整理銘柄指定は行われず即時処理される。

監理銘柄

従来の「監理ポスト」で取り引きされていた銘柄を、東京証券取引所のIT化により改称したもの。ある株式が上場廃止基準に抵触する恐れがある場合、その事実を利用者(投資家)に周知させるため、この区分に指定された上で一般の株式と同じ売買を行う。この適用期間は取引所が必要と認めた期日から取引所が株式の上場廃止基準に該当するか認定した日までである。

実際には「監理銘柄(審査中)」「監理銘柄(確認中)」の二通りに分けて指定される。監理銘柄(審査中)とされるのは、有価証券報告書等に虚偽を用いたなど犯罪性や社会的影響が想定され、上場資格の審査を行う場合である。監理銘柄(確認中)はそれ以外、単純な上場基準への数値抵触や法定義務過怠があり、その復帰や実行の経過を確認する場合である。

また、監理銘柄指定を受けた場合に必ず上場廃止になるものではないことに注意を要する。基準抵触の恐れがある事項が解消に至れば監理銘柄指定は解除される。

主な事例(※すでに上場廃止もしくは会社が消滅しているものを除く)

整理銘柄

従来の「整理ポスト」で取り引きされていた銘柄を、東京証券取引所のIT化に伴い改称したもの。ある株式の上場廃止が決まった場合、その旨を利用者(投資家)に周知させるため、この区分に指定された上で売買を行う。原則として上場廃止当該日まではここで取引がなされ、通常の株式の売買はできるが、信用取引を新しく行うことはできない。

ただし東京証券取引所による上場廃止の決定を受けた銘柄の信用取引に関しては、他の証券取引所に重複上場している銘柄で、かつ他の証券取引所では上場廃止基準に該当しない場合や、TOKYO PRO Marketから他の市場へ市場変更する場合は、東京証券取引所による上場廃止決定後も継続して行うことができる。

かつては整理ポスト指定から原則として3か月後に上場廃止となっていた。東京証券取引所では2002年10月からは破産・解散・株式の譲渡制限・完全子会社化を除き1か月に短縮され、2023年4月からは上場維持基準に適合しなかった場合のみ6か月間に延長された[12]

東京証券取引所における整理銘柄に指定される期間は以下の通りである。

  • 破産・解散・株式の譲渡制限・完全子会社化 - 2週間
  • 銀行取引の停止・民事再生手続又は会社更生手続・事業活動の停止・不適当な合併等・有価証券報告書又は半期報告書の提出遅延・虚偽記載または監査法人による不適正意見(監査意見の不表明)等・上場契約違反等・内部管理体制が改善されない等・株式事務代行機関への委託契約解除・指定保管振替機関における取扱いに係る同意の撤回・株主の権利の不当な制限・反社会的勢力の関与・全部取得・株式の併合・その他(公益・投資者保護) - 1か月
  • 上場維持基準不適合(株主数・流通株式数・時価総額・流通株式時価総額・売買高・流通株式比率・純資産の額) - 6か月

特設注意市場銘柄

初めに東京証券取引所にて2007年11月に設立された制度。カネボウ事件をきっかけに、リスクを含意する「灰色銘柄」を区別することで、SOX法に見られる一連の投資家保護の流れを汲み、また落ち度のある企業側にも、上場廃止未満の猶予を与えることを目的とする。上場会社が上場廃止基準に抵触する恐れがあり、審査の結果上場廃止までに至らないが、内部管理体制に改善の必要性が高いと判断した場合、この上場会社の銘柄を特設注意市場銘柄に指定することができる。指定の決定は、東証上場企業の場合は(日本取引所自主規制法人)が審査を行った上で決定される。監理銘柄(審査中)に指定されている上場企業が指定される場合は、監理銘柄(審査中)を解除の上で指定される[15]

指定された上場会社は、通常の取引銘柄と区別されて売買取引が行われる。上場契約違約金も同時に徴求される(重複上場の場合は各証券取引所から個別に徴求される)。東京証券取引所の場合における計算方法は、2020年2月7日以降は上場時価総額について、上場契約違約金の徴求の対象となる規則違反に関する事項について上場会社が情報開示を最初に行った日の前日の最終価格と直前の月末の上場内国株券等の数を用いて計算する(東京証券取引所の場合は、2022年4月1日までのJASDAQ上場企業は上場時価総額により2000万円もしくは2400万円。以前は各市場で一律1000万円)。2022年4月4日以降における東京証券取引所における上場契約違約金は、プライムは旧:一部、スタンダードは旧:二部、グロースは旧:マザーズをそれぞれ継承する。但し、指定以前に改善報告書の微求により上場契約違約金の徴求を受けた上場会社は、特設注意市場銘柄の指定に伴う上場契約違約金は徴求されない[16][17]。但し、2022年4月3日時点でJASDAQに上場していた企業で、指定の原因となった行為が2022年4月3日以前に行われていた場合は、同年4月4日施行の「コーポレートガバナンス・コードの一部改訂に係る有価証券上場規程等の一部改正について」(有価証券上場規程施行規則令和4年4月4日改正付則第4項の規定)により、従来の上場契約違約金ではなく、旧:JASDAQ上場当時の上場契約違約金が微求される[18]。名古屋証券取引所の場合は年間上場料の20倍となる。

上場契約違約金の支払期限は、特設注意市場銘柄に指定された当日から翌月末日までとなっている。上場契約違約金を期日までに支払なかった場合は、完済の日まで、100円に付き1日4銭の延滞損害金が請求される。

東京証券取引所上場銘柄において、特設注意市場銘柄に指定されたと同時に徴求される上場契約違約金は下表の通りである。

上場時価総額 プライム スタンダード グロース
50億円以下 1920万円 1440万円 960万円
50億円を超え250億円以下 3360万円 2880万円 2400万円
250億円を超え500億円以下 4800万円 4320万円 3840万円
500億円を超え2500億円以下 6240万円 5760万円 5280万円
2500億円を超え5000億円以下 7680万円 7200万円 6720万円
5000億円を超えるもの 9120万円 8640万円 8160万円
上場時価総額 2022年4月3日時点で
JASDAQに上場していた東京証券取引所上場企業
(「有価証券上場規程施行規則
令和4年4月4日改正付則第4項の規定」に該当する場合のみ)
1000億円以下 2000万円
1000億円を超えるもの 2400万円

指定された上場企業は、上場契約違約金の微求の他にも以下のペナルティが課される。

  • 上場維持基準を2022年4月4日以降に新規上場した企業と同じ基準を適用(2022年4月4日時点で指定を受けている上場企業、同日以降に指定された上場企業のみ)[6]
    • 指定以前に経過処置における「上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出した企業は、特設注意市場銘柄に指定されたと同時に経過処置における「上場維持基準の適合に向けた計画書」は無効となる。
    • 上場維持基準(2022年4月4日以降に新規上場した企業と同じ基準)に抵触した場合、上場維持基準に適合するための取組み及びその実施時期を記載した計画を事業年度末日から3か月以内に開示しなければならない。指定された日の前事業年度において上場維持基準に抵触しなかったものの、かつ前事業年度末から3か月以内に特設注意市場銘柄に指定されたために前事業年度において上場維持基準に抵触した場合は、上場維持基準に適合するための取組み及びその実施時期を記載した計画を事業年度末日から3か月以内に開示しなければならない。
    • 2022年4月4日時点で特設注意市場銘柄の指定を受けている上場企業や同日以降に指定された上場企業が特設注意市場銘柄の指定が解除された場合でも、上場維持基準は2022年4月4日以降に新規上場した企業と同じ基準を継続して適用する。
  • 指定期間中において市場変更を行う事は、上場維持基準抵触により名証プレミア→名証メインへ市場変更される場合を除き不可
    • 東京証券取引所と名古屋証券取引所では2020年2月7日以降、特設注意市場銘柄の指定を受け、かつ指定解除された上場企業が市場変更を行う場合は、通常の新規上場申請手続及び新規上場審査と同様の変更申請の他にも、実効性確保措置に関連して策定された改善措置が適切に履行されているかの審査も実施される(当該審査は市場変更申請当日から最近5年間に特設注意市場銘柄の指定を受けていた上場企業が対象。例:2022年7月1日に指定解除された企業が市場変更を行う場合、2022年7月1日から2027年6月30日までの間に市場変更申請を行う場合は当該審査を受けなければならない)[19][20]
  • 株価指数の除外
    • 東証株価指数銘柄が2022年4月4日以降に指定された場合、指定から4営業日後に東証株価指数から除外[21][22]
    • (東証マザーズ指数)銘柄(スタンダード・グロースの新市場区分は不問)が2022年4月4日時点で指定されている場合、2022年4月最終営業日に東証マザーズ指数から除外。東証マザーズ指数銘柄(グロース市場上場銘柄のみ)が2022年4月4日以降に指定された場合、指定から4営業日後に東証マザーズ指数から除外[23]
    • JPX日経インデックス400銘柄、JPX日経中小型株指数銘柄、東証スタンダード市場TOP20銘柄、東証グロース市場Core指数銘柄が指定された場合、指定から4営業日後に各指数から除外
      • 東証株価指数銘柄が特設注意市場銘柄に指定され、2023年8月までに指定解除された銘柄(プライム市場上場銘柄のみ)で東証株価指数における銘柄の再追加を受けるには、2022年10月に実施される段階的ウエイト低減銘柄の第1回判定で流通株式時価総額が100億円未満の場合となった銘柄と同様に、2023年10月に実施される段階的ウエイト低減銘柄の再評価を受けなければならない[21]。但し、2020年から2022年7月までに特設注意市場銘柄に指定された東証株価指数銘柄(指定替え・市場変更等の特例により市場変更された銘柄は除く)はないため、当該事項に該当する上場会社はない。
      • 特設注意市場銘柄に指定されたために2022年4月4日以降に東証株価指数銘柄から除外され、かつ指定解除された東証プライム上場企業は、東証株価指数の再追加を受ける事は出来ない。特設注意市場銘柄に指定されたために東証マザーズ指数から除外され、かつ指定解除された東証グロース上場企業は、東証マザーズ指数(2023年10月に東証グロース市場250指数(仮称)へ名称変更予定)の再追加を受ける事は出来ない。

また、内部管理体制の改善計画や改善計画の進捗状況を開示しなければならない。改善報告書の微求を受けた上場会社で、内部管理体制の改善計画の開示から6か月後に速やかに改善計画の進捗状況を開示した場合には、改善状況報告書を提出したものとみなされる。さらに、指定から1年後に1回目となる内部管理体制の状況等について記載した「内部管理体制確認書」の提出を行わなければならない、指定継続となった場合は指定から1年6か月後に「内部管理体制確認書」を再提出しなければならない。「内部管理体制確認書」の作成は、1回目・2回目とも「新規上場申請のための有価証券報告書(IIの部)記載要領」に準じて作成するが[24]、以下の事項も記入しなければならない。「内部管理体制確認書」の虚偽記載や記入漏れが発覚した場合は、有価証券報告書の虚偽記載と同等に扱われる[25]

  • 特設注意市場銘柄指定となった経緯等について
    • 上記の項目は、事案概要(不正・誤謬等の概要)・原因・改善措置・改善措置の実施状況を記載する。改善措置の実施状況に関しては、確認書提出後に上場管理部の実査等により詳細に確認することになる。この際、記載内容と実態に乖離がみられた場合(当該改善措置を適切に実施していると記載していたにもかかわらず、実際には実施されていなかった場合)は、その後の審査において厳しく勘案する場合がある。
  • 確認書提出日から溯る5年間における公開買付等の状況
  • 確認書提出日から溯る3年間におけるトラブルやクレーム等の状況
    • 上記の項目は、指定された上場企業がリコールや製品回収等を行った場合はその内容や件数も記入しなければならない。指定された上場企業が大規模なリコール・製品回収・無償交換等を行った場合、その概要、リコールや製品回収後の顛末、再発防止策も記入しなければならない。
  • 確認書提出日から溯る3年間における組織変更
  • 確認書提出日から溯る1年間の管理部門における出向状況
  • 適時開示体制の整備に向けた取組み
  • 決算発表予定日及び決算発表日並びに決算発表早期化への取組みの内容(決算には四半期、中間決算も含む)
    • 上記の項目は、確認書提出日から溯る3年間の決算発表予定日及び決算発表日を記載する。決算発表予定日から遅延して決算を発表した場合は、その理由も記入しなければならない。
  • 確認書提出日から溯る5年間に適時開示上において受けた措置
    • 上記の項目は、確認書提出日から溯る5年間において適時開示規則に基づく開示等(四半期開示を含む)の訂正(開示遅延及び開示失念を含む)を行った場合、当該不適正開示について、開示日、訂正開示日、訂正内容、訂正発見の経緯及び再発防止策を記載する。
  • 適時開示体制を対象としたモニタリングの整備
  • 確認書提出日から溯る2年間における役員及び役員に準ずる者の指定会社株式の売買の状況
    • 上記の項目は、確認書提出日から溯る2年間における役員及び役員に準ずる者による指定された上場企業株式の売買の状況(売買日、売買の別、株数、価格、指定された上場企業における売買に当たっての実際の手続きの内容)について記載する。
  • 確認書提出日から溯る5年間に指定会社株式の売買において受けた課徴金納付命令や注意喚起
    • 上記の項目は、確認書提出日から溯る5年間において、指定された上場企業株式の売買(指定された上場企業による自己株式の買付を含む)において金融庁より受けた課徴金納付命令や金融商品取引所より受けた注意喚起の内容(時期、指導や指摘の内容)、当該状況に至った原因及び再発防止策について記載する。
  • 確認書提出日から溯る3年間における法令違反等の状況
    • 上記の項目は、確認書提出日から溯る3年間における行政指導・処分等(国税局税務署及び労働基準監督署からのものも含む)、法令違反及び不祥事等(情報漏洩を含む)の内容について、また、その後のこれら法令違反に対する対応等を記載する。
  • 確認書提出日から溯る3年間の役員及び役員に準ずる者
    • 上記の項目は、確認書提出日から溯る3年間(代表取締役については5年間)の役員及び役員に準ずる者の氏名及び経歴(生年月日、最終学歴、指定された上場企業入社前の全職歴、指定された上場企業における主な職歴及び担当業務、確認書提出日から溯る10年間の賞罰等)を記載する。他の企業や団体等から移籍している場合には具体的な移籍の経緯・理由について、他の企業・団体等の役職員等を兼職している(子会社及び関連会社との兼職は除く)場合には兼職先名、兼職先での業務内容(兼職先で役員に就任している場合には常勤・非常勤の別など具体的な兼職の内容、指定された上場企業における常勤役員については、兼職の経緯・理由)について、退任している場合には退任年月、退任の経緯・理由についても記載する。
  • 確認書提出日から溯る2年間の取締役会の開催状況、取締役会の運営実務
  • 大株主の最近3年間における所有株式数及び持株比率の推移
    • 上記の項目は、提出日における大株主(上位15名程度)の最近3年間における所有株式数(他人名義のものを含む)及び持株比率の推移を、IIの部記載要領」の表の形式で記載する。なお、重要な変動があればその理由(記載可能な場合に限る)を注記する。
  • 確認書提出日から溯る3年間の国税庁及び税務署からの調査について
    • 上記の項目は、確認書提出日から溯る3年間における企業集団の国税局及び税務署からの調査の状況について、調査の有無、調査時期、調査内容、法令違反、行政指導等の状況及びその後の対応等を記載する。
  • 継続企業の前提に関する注記について
    • 上記の項目は、直近の事業年度末において継続企業の前提に重要な疑義が生じている場合は、当該疑義を解消するための事業計画(資金計画も含む)及びその進捗状況について記載する。
  • 減損損失の計上方法及び管理方法
  • 最近5年間に計上した減損損失
  • 引当金の計上方法及び管理方法
  • 最近5年間に計上した引当金
  • 製造原価について

2013年8月9日に実施された有価証券上場規程改正前は、2回まで「内部管理体制確認書」の再提出が可能であり(改善期間3年。例:6月1日に指定を受けた上場会社で、かつ指定が継続された場合は毎年6月1日に「内部管理体制確認書」の再提出を行わなければならない)[26][27]、1回目並びに2回目に提出した「内部管理体制確認書」の審査でも上場廃止とはならなかったが、改正後は1回しか再提出が認められず(改善期間1年。改善されていないものの、今後の改善が見込まれる場合のみ改善期間が6ヶ月延長される)、1回目の「内部管理体制確認書」提出日の6か月後の当日に再提出を行わなければならない(例:6月1日に最初の「内部管理体制確認書」を提出し、かつ指定が継続された場合は12月1日に「内部管理体制確認書」の再提出を行わなければならない)[28]。改正後は、前述の通り1回目に提出した「内部管理体制確認書」による審査結果によっては上場廃止となる。「内部管理体制確認書」による審査結果は、1回目の提出時が1ヶ月〜6ヶ月、再提出時が1ヶ月〜7ヶ月と異なる(後述)。また、指定期間中に上場維持基準に抵触(東証旧市場並びに名証旧市場名称では債務超過などの上場廃止基準に該当)する場合もある他、指定期間中や指定解除後も、他の事由(経営破綻、株式公開買付け、公益・投資者保護、有価証券報告書提出遅延など)により上場廃止となった企業もある。

内部管理体制に問題がないと認められた場合はこの銘柄の指定が解除され、通常の取引銘柄に復帰できるが、問題がある場合は指定継続もしくは上場廃止となり、指定継続となった前述の通り指定から1年6ヶ月後に2回目となる「内部管理体制確認書」を再提出しなければならない。指定継続となった上場企業は、再提出した「内部管理体制確認書」の審査結果により、指定解除(上場維持)か上場廃止の最終判断が下される[29]。「内部管理体制確認書」の審査結果によって上場廃止となった場合や、指定期間中に「内部管理体制確認書」の審査結果以外の事由(上場維持基準不適合、経営破綻、株式公開買付け、公益・投資者保護、有価証券報告書提出遅延など)により上場廃止となったは場合は、整理銘柄への指定と同時に特設注意市場銘柄の指定は取り消される。「内部管理体制確認書」の審査結果による指定解除や上場廃止は、特設注意市場銘柄の指定と同様、日本取引所自主規制法人による審査結果によって決定される。

指定された上場企業が行った主な内部管理体制改善策は以下の通りである。

  • 特別調査委員会や第三者委員会の設置
  • 第三者割当増資を実施した上で、第三者割当増資先(上場企業に限る)の連結子会社化(第三者割当増資先の連結子会社となった結果、ディー・エル・イー朝日放送グループホールディングスの連結子会社化)やハイアス・アンド・カンパニーくふうカンパニーの連結子会社化)の様に親子上場となったケースもある。非上場企業に対する第三者割当増資は保有比率に制約がある)
  • 第三者割当増資によって親子上場となった場合、会計監査人を親会社と同一に変更
  • 特設注意市場銘柄指定となった原因となった人物や企業の影響力を低下させる(保有株式比率の低下、原因となった人物との接触を禁止、原因となった人物を営業所への出入禁止とする、原因となった人物への退職勧奨など)
  • 役員の一新
  • 監査等委員会設置会社への移行

等である。

これとは別に、マツヤ日本フォームサービスの様に、株式公開買付けを行った上で自主的に上場廃止に踏み切ったケースもある(マツヤと日本フォームサービスは2回目の内部管理体制確認書提出後に株式公開買付けが成立し、その後上場廃止)。

「内部管理体制確認書」の審査結果によって上場廃止となった企業は6社あり、この内4社は事業停止(休眠状態)に追い込まれたり、経営破綻に至っている。6社の内、上場廃止時における会計監査人は、京王ズホールディングスグローバルアジアホールディングスエル・シー・エーホールディングスアジア開発キャピタルの4社が監査法人アリアであった他、京王ズホールディングス、グローバルアジアホールディングス、五洋インテックスの3社は指定期間中において、監査法人の変更を行っていた他、京王ズホールディングス、グローバルアジアホールディングス、エル・シー・エーホールディングス、フード・プラネットの4社は、上場廃止までの5年間で2回以上も監査法人の変更を行っていた[30]。フード・プラネットと五洋インテックスの2社は指定期間中において本社の移転を繰り返していた。

内部管理体制確認書の審査結果によって上場廃止となった企業において、上場廃止となった主な原因は以下の通りである。

  • 内部管理体制確認書の虚偽記載や記入すべき事項の未記入
  • 最初の改善計画の開示を1回目に提出する内部管理体制確認書の提出期限1か月前に行う
  • 取締役相互の牽制機能の不備
  • 外部委託先への内部監査業務委託料の支払い遅延に伴う内部監査業務の停止
  • 稟議の申請から承認までが代表取締役のみで行う
  • 債権者との契約違反、契約書等の文書の保管状況が不備であること
  • 債務管理の不備
  • 組織体制や規程等の未整備
  • 常勤監査役の勤務実態なし
  • 日本取引所自主規制法人からの照会に対する回答を拒否する
  • 子会社の管理が不十分
  • 役職員のコンプライアンス意識の醸成が不十分

等である。

2020年11月1日以降に新規上場申請を行った企業において、新規申請書類や上場審査の書類に重大な虚偽記載を記載した場合が発覚した場合は、1年以内に宣誓書違反による再審査を受け、上場維持か上場廃止の最終判断が下されることになるため、特設注意市場銘柄の指定対象外となる[31][32]

指定を受けてから指定解除もしくは上場廃止までのおおまかな流れは以下の通りである。

  • 上場契約違約金の徴求
  • 上場維持基準は2022年4月4日以降に新規上場した企業と同じ基準を適用。経過処置の適用を受けている企業で、2022年4月4日以降に指定された場合は上場維持基準を同日以降に新規上場した企業と同じ基準に変更
  • 東証マザーズ指数銘柄が2022年4月4日時点で指定を受けている場合、同年4月の最終営業日(2022年4月28日)に東証マザーズ指数から除外。グロース市場上場企業が2022年4月4日以降に指定された場合は、指定から4営業日後に東証マザーズ指数から除外
  • 指定から4日後に東証株価指数から除外(2022年4月1日以前に1部上場(新市場区分は不問)した企業並びにプライム市場へ新規上場もしくはスタンダード市場・グロース市場からプライム市場へ市場変更した企業のみ)
  • 上場維持基準に抵触した場合、「上場維持基準の適合に向けた計画書」(2022年4月4日以降に新規上場した企業と同じ基準)を提出
  • 指定を受けた企業が「再発防止のための改善計画」を開示した後、改善状況報告書を提出
  • 指定期間中に他の事由(上場維持基準を満たさない(東証上場企業、名証メイン上場企業、名証ネクスト上場企業のみ)、経営破綻、株式公開買付け、公益・投資者保護、有価証券報告書提出遅延など)により上場廃止が決定した場合は、整理銘柄への指定と同時に特設注意市場銘柄の指定を取り消された後に上場廃止。上場維持基準に抵触した名証プレミア上場企業が名証メインの上場維持基準を満たさなかった場合(名証メインの上場維持基準を満たしている場合は名証メインへ市場変更)は整理銘柄への指定と同時に特設注意市場銘柄の指定を取り消された後に上場廃止
  • 指定から1年後に1回目の内部管理体制確認書を提出
  • 提出した1回目の内部管理体制確認書の審査に基づく指定解除・指定継続・上場廃止の判断(審査は1か月~6か月を要する)
    • 指定解除された場合は通常の取引銘柄に復帰すると同時に上場維持
    • 指定継続となった場合は、1回目の内部管理体制確認書提出日の6か月後に2回目の内部管理体制確認書を提出
    • 審査により上場廃止の恐れがあると判断した場合は、監理銘柄(審査中)へ指定。改善の見込みがないと判断された場合は、監理銘柄(審査中)の指定から7日後に上場廃止の決定を下し、整理銘柄への指定と同時に特設注意市場銘柄の指定を取り消された後に上場廃止
  • 指定を受けた企業が「再発防止のための改善計画」を再度開示(1回目の審査で指定継続となった企業のみ)
  • 指定から1年6か月後に監理銘柄(審査中)へ指定(1回目の審査で指定継続となった企業のみ)
  • 1回目の内部管理体制確認書提出日の6か月後に2回目の内部管理体制確認書を提出(該当する上場維持基準を満たし、かつ1回目の審査で指定継続となった企業のみ)
  • 提出した2回目の内部管理体制確認書の審査に基づく指定解除・上場廃止の最終判断(審査は1か月以上を要する)
    • 指定解除された場合は通常の取引銘柄に復帰すると同時に上場維持
    • 上場廃止となった場合は、整理銘柄への指定と同時に特設注意市場銘柄の指定を取り消された後に上場廃止

上場廃止基準は以下の通りである。上場廃止基準は2013年8月9日に実施された有価証券上場規程改正後のものである(下記の上場廃止基準は2013年8月9日以降に指定された上場会社に適用。2013年8月8日以前に指定された上場会社は改正前の規程が適用される)。

  • 指定後1年以内に内部管理体制等について改善がなされなかったと取引所が認める場合(改善の見込みがなくなったと取引所が認めた場合に限る。同時に整理銘柄にも指定される)。
  • 指定中に、上場会社の内部管理体制等について改善の見込みがなくなったと取引所が認める場合(同時に整理銘柄にも指定される)。
    • 上記は、フード・プラネット五洋インテックスの様に、1回目に提出した内部管理体制確認書の内容確認など(指定を受けた上場企業が開示した「再発防止のための改善計画」が進捗せず、かつ改善を完了させるための具体的な計画が示されていない場合や内部管理体制確認書の虚偽記載など)によっては、監理銘柄(審査中)にも指定され[33][34]、内部管理体制等について改善がなされなかったと取引所が認める場合は上場廃止となる。
  • 指定後1年6か月以内に上場会社の内部管理体制等について改善がなされなかったと取引所が認める場合(同時に監理銘柄<審査中>にも指定され、1回目の内部管理体制確認書提出後の6ヶ月後に2回目の内部管理体制確認書を再提出しなければならない。2回目の提出でも改善がなされていないと取引所が認めた場合は上場廃止となり、同時に整理銘柄にも指定される)。
  • 内部管理体制確認書を指定された日に提出しなかった場合(同時に整理銘柄にも指定される)。

特設注意市場銘柄に指定された主な企業

証券コードのリンクがない企業は上場廃止となった企業。商号は現在の商号(会社解散時や法人格消滅時はその時点での商号)。上場銘柄は特記がない限り指定当時のもの。

現在指定中の企業

上場銘柄は現在上場している銘柄。

社名 コード 指定日 指定継続
決定日
内部管理体制確認書
再提出日
備考
アジャイルメディア・ネットワーク 2022年6月16日 - - 2022年6月22日に
東証マザーズ指数から除外[35]
ディー・ディー・エス 2022年9月29日 - - 2022年10月5日に
東証マザーズ指数から除外[36]
2023年5月15日に内部管理体制等について改善の見込みがなくなったと
当取引所が認める場合に該当するおそれがあると認められるため
『監理銘柄』(審査中)に指定[37]
オウケイウェイヴ 2022年10月15日 - - [38]
ルーデン・ホールディングス 2023年1月28日 - - 2023年2月2日に
東証マザーズ指数(段階的ウエイト低減銘柄に指定)
から除外
上場契約違約金は
「有価証券上場規程施行規則
令和4年4月4日改正付則第4項の規定」
により
JASDAQグロース当時の
上場契約違約金を微求[18]
東京衡機 2023年3月30日 - - [39]
内部管理体制確認書の審査結果により上場廃止となった企業

銘柄は上場廃止時のもの。

改正前
社名 コード 指定日 上場廃止日 指定時の
会計監査人
備考
京王ズホールディングス 東証マザーズ
3731
2012年
1月18日
2015年
5月29日
清和監査法人
→監査法人ハイビスカス
→監査法人アリア
2015年4月28日に
「特設注意市場銘柄への指定から3年を経過し、
内部管理体制等に引き続き問題がある場合」に該当したために
『整理銘柄』に指定[40]
グローバルアジアホールディングス 東証JQ
3587
2012年
6月20日
2015年
9月12日
阪神公認会計士共同事務所
→公認会計士丸岡裕事務所
→監査法人アリア
2015年8月11日に
「特設注意市場銘柄への指定から3年を経過し、
内部管理体制等に引き続き問題がある場合」に該当したために
『整理銘柄』に指定[41]
改正後
社名 コード 指定日 指定継続
決定日
内部管理体制確認書
再提出日
上場廃止日 指定時の
会計監査人
備考
エル・シー・エーホールディングス 東証2部
4798
2014年
2月8日
2015年
5月13日
2015年
8月10日
2015年
12月1日
監査法人アリア 2015年10月30日に
「指定後1年6か月以内に上場会社の内部管理体制等について
改善がなされなかったと取引所が認める場合」
に該当したため
『整理銘柄』に指定[42]
フード・プラネット 東証2部
7853
2016年
3月17日
- 2017年
5月29日
東京第一監査法人 2017年4月21日に
1回目に提出した内部管理体制確認書の内容確認などにより
『監理銘柄』(審査中)に指定[33]
2017年4月28日に
「内部管理体制等について改善がなされなかったと取引所が認める場合
(改善の見込みがなくなったと取引所が認めた場合に限る)」に該当したため
『整理銘柄』に指定[43][44]
2017年6月7日破産手続開始決定
2019年4月17日法人格消滅
五洋インテックス 東証JQ
7519
2020年
3月12日
2021年
7月26日
監査法人コスモス
→フロンティア監査法人
2021年6月18日に
1回目に提出した内部管理体制確認書の内容確認などにより
『監理銘柄』(審査中)に指定[34][45]
2021年6月25日に
「内部管理体制等について改善がなされなかったと取引所が認める場合
(改善の見込みがなくなったと取引所が認めた場合に限る)」に該当したため
『整理銘柄』に指定[25]
アジア開発キャピタル 東証スタンダード
9318
2021年
8月7日
2022年
9月28日
2023年
2月7日
2023年
4月30日
監査法人アリア 指定日時点では
東証2部
上場契約違約金は
東証スタンダードと同額の
上場契約違約金を微求[46]
2023年3月29日に
「指定後1年6か月以内に上場会社の内部管理体制等について
改善がなされなかったと取引所が認める場合」
に該当したため
『整理銘柄』に指定[47]
指定解除もしくは他の事由によって上場廃止となった企業

指定解除された上場企業における上場銘柄は指定解除時のもの。指定解除されずに株式公開買付けや経営破綻などの他の事由により上場廃止となった上場企業における上場銘柄は上場廃止時のもの。

改正前
社名 コード 指定日 指定解除日 上場廃止日 備考
IHI 名証1部
7013
福証
7013
札証
7013
2008年2月9日 2009年5月12日 - 東証・名証における
2022年4月4日以降の市場区分は
東証プライム・名証プレミア
名証プレミア・福証・札証は
2022年12月25日上場廃止
2022年12月26日以降は
東証プライム単独上場
真柄建設 東証1部
1839
大証1部
1839
2008年3月26日 - 2008年8月6日 民事再生法適用申請に伴い上場廃止
(オックスホールディングス) 大証ヘラクレス
2350
2008年6月17日 2009年3月6日 有価証券報告書提出遅延のため上場廃止
中道機械 札証
8094
2008年7月23日 民事再生法適用申請に伴い上場廃止
(プラコー)
東証JQ 6347
2009年3月7日 2011年7月13日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証スタンダード
フタバ産業 2009年3月20日 2010年6月24日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証プライム・名証プレミア
大水 2009年6月17日 2011年11月16日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証スタンダード
(ジャパン・デジタル・コンテンツ信託) 東証マザーズ
4815
2009年8月26日 - 2009年11月1日 事業停止に伴い上場廃止
(アイフラッグ) 大証JQ
2759
2009年10月17日 2011年5月25日 2015年9月29日 光通信の完全子会社化に伴い上場廃止
アルデプロ 2009年11月25日 2012年4月19日 - 2014年12月1日に市場選択制度により東証二部へ指定変え
2022年4月4日以降の市場区分は
東証スタンダード
BRUNO
東証JQ 3140
2010年1月27日 2011年7月6日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証グロース
(アイロムグループ) 2010年4月22日 2011年6月22日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証プライム
(リンク・ワン) 東証マザーズ
2403
2010年5月19日 - 2011年4月25日 時価総額が所要額未満のため上場廃止
2011年4月28日民事再生法申請
メルシャン 東証1部
2536
大証1部
2536
2010年9月25日 - 2010年11月26日 キリンホールディングスの完全子会社化に伴い
上場廃止
(モジュレ) 大証JQ
3043
2010年10月9日 2013年3月6日 2016年11月1日 有価証券報告書提出遅延のため上場廃止
(デザインエクスチェンジ) 東証マザーズ
4794
2010年12月22日 - 2011年5月1日 時価総額が所要額未満のため上場廃止
2011年9月22日民事再生手続開始決定
オリンパス 2012年1月21日 2013年6月11日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証プライム
マツヤ 東証JQ
7452
2013年5月15日 - 2015年12月28日 アルピコホールディングスによるTOBにより上場廃止
2016年4月1日にアップルランドへ吸収合併され解散
改正後
社名 コード 指定日 指定継続
決定日
内部管理体制確認書
再提出日
指定解除日 上場廃止日 備考
リソー教育 2014年3月11日 2015年9月8日 2015年9月11日 2015年10月31日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証プライム[48]
JALCOホールディングス
東証JQ 6625
2014年7月1日 - 2015年9月26日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証スタンダード
石山Gateway Holdings 東証JQ
7708
2015年1月29日 - 2015年8月1日 2015年5月27日に
社長が東京地検特捜部に逮捕
2015年6月15日に
証券取引等監視委員会による告発を受けて
監理銘柄(審査中)に指定
2015年6月30日に
公益・投資者保護により『整理銘柄』に指定
2016年7月6日破産手続開始決定
2021年1月15日法人格消滅
エナリス 東証マザーズ
6079
2016年5月31日 2016年7月29日 2016年9月24日 2019年3月13日 KDDI電源開発によるTOBにより上場廃止
CAICA DIGITAL
東証JQ 2315
2015年2月25日 2016年4月28日 2016年8月25日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証スタンダード[49][50]
(アイセイ薬局) 東証JQ
3170
2015年4月1日 - 2016年5月2日 アイセイホールディングスによるTOBにより上場廃止
東芝 2015年9月15日 2016年12月19日 2017年3月15日 2017年10月12日 - 2017年8月1日に債務超過により
東証一部・名証一部から東証二部・名証二部へ指定変え
同時に株価指数東証株価指数日経平均株価)から除外[51]
2021年1月29日に
東証一部・名証一部へ再度指定
2022年4月4日以降の市場区分は
東証プライム・名証プレミア
SDSホールディングス 2018年9月1日 2019年11月29日 2020年3月2日 2020年5月21日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証スタンダード[52]
ディー・エル・イー 2018年12月28日 - 2020年2月22日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証スタンダード[53]
日本フォームサービス 東証JQ
7869
2019年8月8日 2020年11月13日 2021年2月8日 - 2021年4月26日 NFSによるTOBにより上場廃止[54]
ナイス 2019年9月20日 - 2020年12月19日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証スタンダード[55]
ユー・エム・シー・エレクトロニクス 2019年12月19日 2021年4月29日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証プライム[56]
第一商品
東証JQ 8746
2020年7月11日 2021年9月27日 2022年1月11日 2022年4月1日 - 2022年4月4日以降の市場区分は
東証スタンダード[57]
ハイアス・アンド・カンパニー 2020年11月27日 2022年1月26日 2022年5月27日 2022年7月28日 - 2020年11月27日に
『監理銘柄(審査中)』を解除の上
特設注意市場銘柄に指定[15]
2020年12月27日に
指定替え・市場変更等の特例
(特設注意市場銘柄の指定)
により
東証一部からマザーズへ再度市場変更
2020年12月28日に
東証株価指数から、
2022年4月28日に
(東証マザーズ指数)から
それぞれ除外[58]
テラ 東証スタンダード
2191
2021年10月14日 - - 2022年8月23日 指定日時点では
JASDAQスタンダード
上場契約違約金は
旧:JASDAQの上場契約違約金を微求[59]
破産手続開始決定により
上場廃止
EduLab 2022年4月1日 2023年5月20日 - 2022年2月12日に
指定替え・市場変更等の特例
(改善報告書の微求)
により
東証一部からマザーズへ再度市場変更
改善報告書の微求と同時に
上場契約違約金も微求[16]
2022年2月14日に
東証株価指数から、
2022年4月28日に
東証マザーズ指数から
それぞれ除外[17]
(ジー・スリーホールディングス) - 指定日時点では
東証2部
上場契約違約金は
東証スタンダードと同額の
上場契約違約金を微求[60]

宣誓書違反による再審査

東京証券取引所では、2020年2月7日に実施された有価証券上場規程改正で、同日以降に1部指定並びに市場変更を実施した上場企業において申請書類に重大な虚偽記載を記載し、特設注意市場銘柄の指定もしくは改善報告書の微求を受けた場合は同時に、指定替え・市場変更等の特例により、他の市場への市場変更並びに申請前の市場への指定替えがそれぞれ行われていたが[19](対象となった上場企業は、いずれも東証一部からマザーズへ再度市場変更されたハイアス・アンド・カンパニーEduLabの2社)、新市場区分への移行に伴い、2022年4月4日からは指定替え・市場変更等の特例は廃止された[6]。宣誓書違反による再審査は、東京証券取引所新市場への移行に伴い、指定替え・市場変更等の特例の代替として設立された制度[61]

上場会社が新規上場や市場変更を行う際、東京証券取引所に提出する書類に関して必要事項を漏れなく記載し、記載した内容がすべて真実である旨の宣言書を提出したにもかかわらず、虚偽記載を行うなど宣誓書において宣誓した事項に違反し、新規上場基準等に適合していなかったと東京証券取引所が認める場合は、 1年以内に新規上場審査に準じた上場適格性の審査を受けなければならない。宣誓書において宣誓した事項に違反した上場企業は、1年間の上場廃止基準に係る猶予期間に入る。

宣誓書違反による再審査を受けることになる上場会社は、上場廃止基準に係る猶予期間中において東京証券取引所に再審査の申請を行わなければならない。新規上場基準に準じた基準に適合すると認められた場合は上場が維持されるが、上場廃止基準に係る猶予期間終了日時点において審査が継続されている場合は、監理銘柄(審査中)に指定され、新規上場基準に準じた基準に適合すると認められた場合は上場が維持される。

上場廃止基準に係る猶予期間中に再審査の申請を行わなかった場合や、審査において新規上場基準に準じた基準に適合すると認められなかった場合は上場廃止となる。

上場廃止後の主な扱い

証券保管振替機構(以下ほふり)が取扱っている株式が上場廃止となった場合、上場廃止後の取り扱いに関しては、以下の条件がすべて揃っている場合に限り、ほふりによる取扱が継続される[62]

  • 1:金融商品取引所における上場廃止の原因となる事実が、下記のいずれかであること
    • 会社の解散(合併による解散を除く)
    • 民事再生手続開始の申立て
    • 会社更生手続開始の申立て
  • 2:ほふりの取扱継続期間において、ほふりが定める業務処理の方法に従うことを発行者が再度確認していること
  • 3:ほふりの取扱継続期間において、発行者と指定株主名簿管理人との契約が継続されていること
  • 4:ほふりの取扱継続期間において、発行者がほふりの定める手数料を支払うこと

ほふりによる取扱が廃止された場合は、上場廃止となった株式は証券会社での管理は不可能となり、その株式は発行会社の株式名簿による管理となる[63]

上場廃止後に破産手続開始決定を受けたり(破産手続開始決定による上場廃止も含む)、会社更生法または民事再生法の規定による更生計画に基づく100%減資などを行った場合、その株式は無価値となる。これを無価値化や価値喪失という[64][65]

無価値化となるのは以下の場合である。

  • 解散(合併は除く)による清算結了
  • 破産法の規定による破産手続開始の決定
  • 会社更生法または民事再生法の規定による更生計画に基づく100%減資
  • 預金保険法の規定による特別危機管理開始の決定

上場廃止によって無価値化となった例としては、破産法の規定による破産手続開始の決定によって上場廃止となった企業、日本航空(会社更生法よる更生計画に基づく100%減資)、フード・プラネット(上場廃止直後に破産手続開始決定)、インデックスレナウン(この2社は民事再生手続廃止後に破産手続開始決定)、シベール(民事再生法よる更生計画に基づく100%減資)などがある。

上場廃止と上場維持の例

上場廃止になった例

経営破綻、合併や完全子会社化などではなく東京証券取引所第1部を上場廃止になった例として、西武鉄道株(株式の大量保有およびその比率に関する有価証券報告書への重大な虚偽記載を行ったことによる)などがある。同じく、同取引所第2部市場を上場廃止になった例は、駿河屋株、丸石ホールディングス株(ともに架空増資を行ったことによる)などがある。

また新興企業を対象とした東証マザーズ市場の上場廃止例としてライブドアライブドアマーケティングの例(有価証券報告書の虚偽記載)がある。

自主的に上場廃止に踏み切った例

前述の例はいずれも不祥事絡みであるが、不祥事や経営破綻、完全子会社化などではなく、自主的に上場の廃止に踏み切る(非公開化)企業も出現している。なお、理由としては、特に敵対的買収の脅威から逃れることなどが挙げられる。

非公開化に移行する場合、市場に流通している自社株式を企業の関係者が全て買収して、完全に経営権を掌握する必要があり、自社株式を経営陣が買収する場合MBO、従業員が買収する場合EBO、経営者及び従業員が合同で買収する場合MEBOと呼ばれる。

上場廃止を目的するメリットとしては次のようなものが考えられる。

  • 株主の意向(配当率、経営への介入など)に左右されない長期的な視点での経営ができる
  • 情報開示が年一度の有価証券報告書の提出(ただし、半期報告書の提出義務は残る)といった、最小限のレベルで済む
  • 上場企業に比べて各種監査も簡略化できる

一方デメリットとしては

  • 資金調達が銀行からの借り入れ(融資)に限られる
  • 人材獲得の面でハンディキャップを背負う

自主的に上場の廃止に踏み切った例としてはサンスターワールド (企業)、、すかいらーくレックス・ホールディングス青汁キューサイなどがある。ただし、すかいらーくとワールドはその後再上場した。

外国企業では米ダウ・ケミカル、仏パリバ、韓ポスコなどが上場廃止となっている。

上場廃止予定日までに倒産・解散した例

特異なケースではあるが、証券取引所により上場廃止が決定された後、廃止予定日までにその企業が倒産・解散したケースもある。証券取引所における上場廃止等の決定公告では、「速やかに上場廃止すべき事情が発生した場合は、上記整理銘柄指定期間及び上場廃止日を変更することがあります」の注記がなされる。その影響で、上場廃止が当初の予定よりも前倒しされたことがある。

東証マザーズに2009年11月に上場したエフオーアイは、わずか半年後の2010年5月に上場審査時の有価証券届出書目論見書)の虚偽記載が発覚し、5月18日に6月19日での上場廃止が決定すると、5月31日にに経営存続が不可能として負債総額約92億円で破産した。これは、そもそも上場を目的に巨額の架空の売上高を計上した目論見書を捏造し、上場審査を通過したという悪質なもので、しかもこれを東証側の上場審査の関係者が見破れずに審査を通過させて上場させてしまったものであった。この破産に伴い、同社の実際の上場廃止は6月15日となった。

また、東証2部に上場していた雪印食品は、雪印牛肉偽装事件と、親会社の雪印乳業(現:雪印メグミルク)が起こした雪印集団食中毒事件の影響で経営破綻に追い込まれた。これを受けて、東京証券取引所は2002年2月14日に同社の株式を整理ポストに割当てた。なお、当時の規則は「整理ポスト割当から3か月後に上場廃止」であったため、本来であれば5月14日に上場廃止となるはずであったが、整理ポスト割当後に4月30日付での解散が決議されたため、上場廃止の期日が当初の予定よりも2週間早い、4月30日に前倒しされた。

重複上場の廃止

複数の市場へ株式を上場(重複上場)する企業が、そのうち特定の市場のみ上場を廃止する例も存在する。とりわけ、情報化社会のもと取引が東証に(一極集中)する中で、地方証券取引所へ重複上場する意義が薄れ、コストや事務負担の軽減のために重複上場を廃止する事例が多数発生している[66]

これとは逆に、小島鐵工所東福製粉の様に、東証による上場廃止基準により上場廃止になったものの、東証と重複上場していた地方証券取引所では上場廃止基準に該当しなかったために、地方証券取引所単独上場となった企業もある。

上場維持となった例

2007年3月期、証券大手「日興コーディアルグループ」は不正会計処理問題により上場基準に抵触したため、上場廃止が見込まれたが、東京証券取引所は「赤字を黒字と偽る粉飾ではない」「組織的・意図的ではない」などを理由として日興の上場維持を決定した。

ニューヨーク証券取引所における上場廃止

ニューヨーク証券取引所(NYSE)では、会社が株主や投資者に対して適時・適切・正確な情報開示を行わなかった場合や財務情報の報告について公正な会計慣行(good accounting practices)に 従わなかった場合などには上場廃止の判断の可能性を生じるとしている[1]

また、上場廃止基準には取引所との契約違反(Agreements are Violated)、公益に反する活動 (Operations Contrary to Public Interest)、監査委員会(Audit Committee)の不設置なども列挙されているが、取引所は上記の基準に制約されないと規定されており、有価証券報告書等の虚偽記載など個々の事案に即した対応ができるよう証券取引所には広範な裁量権が認められている[1]

ロンドン証券取引所における上場廃止

イギリスでは上場に関する権限は第一義的には金融当局であるFSA(Financial Services Authority)にあり、FSA上場規則では発行会社が上場維持義務(continuing obligations for listing)を満足しなくなった場合などが上場廃止の基準とされている[1]。特にFSA規則に定められた「通常の規則立った取引を阻害する特別な事情(special circumstances that preclude normal regular dealings)」があるときは、上場廃止の広範な裁量権がFSAに認められている[1]

ロンドン証券取引所(LSE)では、金融当局であるFSAなどの定める規則の遵守など「申請及び開示に関する基準 (Admission and Disclosure Standards)」を定めており、これに違反した場合には譴責(censure)、違反金(fine)、損害賠償命令、上場廃止(cancellation)といった処分を行うことができることとなっている[1]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 横山淳. “大和総研調査季報 2012年春季号 Vol.6「上場廃止について」”. 大和総研. 2018年9月19日閲覧。
  2. ^ “基本から学ぶM&A講座:第9回”. nomad journal. 2018年9月19日閲覧。
  3. ^ “公開会社の株式に譲渡制限を付す方法”. BUSINESS LAWYERS. 2018年9月19日閲覧。
  4. ^ a b c 市場区分の見直しに向けた上場制度の整備に伴う有価証券上場規程等の一部改正について(第二次制度改正事項)東京証券取引所 2021年4月30日
  5. ^ a b c 当取引所市場の特性等を踏まえた上場制度の整備に係る「有価証券上場規程」等の一部改正等について名古屋証券取引所 2021年7月20日
  6. ^ a b c d e 市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について -第二次制度改正事項に関するご説明資料-東京証券取引所 2021年2月12日
  7. ^ スタンダード→プライム、グロース→スタンダードに指定替えする場合が該当。
  8. ^ 東証プライム、1841社上場 基準厳格化で新陳代謝狙う日本経済新聞 2022年1月11日
  9. ^ 東証が新市場区分の選択結果を発表三井住友DSアセットマネジメント 2022年1月12日
  10. ^ a b c 東証の暫定組、猶予2026年3月まで 上場維持へ改革急務日本経済新聞 2023年1月25日
  11. ^ a b 論点整理を踏まえた今後の東証の対応(案)東京証券取引所 2023年1月25日
  12. ^ a b c d 上場維持基準に関する経過措置の取扱い等について東京証券取引所 2023年1月30日
  13. ^ a b c 上場会社に選択を求める経過措置の制度要綱 プライム市場上場会社は審査なしでスタンダード市場再選択もあり大和総研 2023年2月6日
  14. ^ 名証通信第12号名古屋証券取引所 2021年7月21日
  15. ^ a b 監理銘柄(審査中)の指定解除、特設注意市場銘柄の指定、上場市場の変更(市場第一部からマザーズへの変更)及び上場契約違約金の徴求について:ハイアス・アンド・カンパニー(株)東京証券取引所 2020年11月26日
  16. ^ a b 改善報告書の徴求、上場市場の変更(市場第一部からマザーズへの変更)及び上場契約違約金の徴求について:(株)EduLab東京証券取引所 2022年1月11日
  17. ^ a b 特設注意市場銘柄の指定:(株)EduLab東京証券取引所 2022年3月31日
  18. ^ a b 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:ルーデン・ホールディングス(株)東京証券取引所 2023年1月27日
  19. ^ a b 上場子会社のガバナンスの向上等に関する上場制度の整備に係る有価証券上場規程等の一部改正について東京証券取引所 2020年2月5日
  20. ^ 上場子会社のガバナンスの向上等に関する上場制度の整備に係る「有価証券上場規程」等の一部改正について名古屋証券取引所 2020年2月5日
  21. ^ a b TOPIX(東証株価指数)等の見直しについて東京証券取引所 2020年12月25日
  22. ^ JPX:TOPIX算出見直し、浮動株比率は政策保有株分を除外ブルームバーグ 2020年12月25日
  23. ^ 東証マザーズ指数の見直しについて東京証券取引所
  24. ^ 内部管理体制確認書記載要領東京証券取引所
  25. ^ a b 上場廃止等の決定:五洋インテックス(株)東京証券取引所 2021年6月25日
  26. ^ 特設注意市場銘柄指定一覧福岡証券取引所 2009年9月11日
  27. ^ 上場廃止等の決定 —グローバルアジアホールディングス(株)—東京証券取引所 2015年
  28. ^ 上場廃止基準、特設注意市場銘柄の見直し大和総研 2013年9月12日
  29. ^ 証券用語解説集 特設注意市場銘柄野村證券
  30. ^ 「監査法人の変更」にご用心 破綻企業の通る道日経マネー 2017年11月6日
  31. ^ 資本市場を通じた資金供給機能向上のための上場制度の見直しに係る有価証券上場規程等の一部改正新旧対照表(市場区分の再編に係る第一次制度改正事項)東京証券取引所
  32. ^ 資本市場を通じた資金供給機能向上のための上場制度の見直しに係る有価証券上場規程等の一部改正について(市場区分の再編に係る第一次制度改正事項)東京証券取引所 2020年10月21日
  33. ^ a b 監理銘柄(審査中)の指定:(株)フード・プラネット東京証券取引所 2017年4月21日
  34. ^ a b 監理銘柄(審査中)の指定:五洋インテックス(株)東京証券取引所 2021年6月18日
  35. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:アジャイルメディア・ネットワーク(株)東京証券取引所 2022年6月15日
  36. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:(株)ディー・ディー・エス東京証券取引所 2022年9月28日
  37. ^ 監理銘柄(審査中)の指定:(株)ディー・ディー・エス東京証券取引所 2023年5月15日
  38. ^ 名証一斉連絡名古屋証券取引所 2022年10月14日
  39. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:(株)東京衡機東京証券取引所 2023年3月29日
  40. ^ 上場廃止等の決定 —(株)京王ズホールディングス—東京証券取引所 2015年4月28日
  41. ^ 上場廃止等の決定 —グローバルアジアホールディングス(株)—東京証券取引所 2015年8月11日
  42. ^ 上場廃止等の決定:(株)エル・シー・エーホールディングス東京証券取引所 2015年10月30日
  43. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:(株)フード・プラネット東京証券取引所 2016年3月16日
  44. ^ 上場廃止等の決定:(株)フード・プラネット東京証券取引所 2017年4月28日
  45. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:五洋インテックス(株)東京証券取引所 2020年3月11日
  46. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:アジア開発キャピタル(株)東京証券取引所 2021年8月7日
  47. ^ 上場廃止等の決定:アジア開発キャピタル(株)東京証券取引所 2023年3月29日
  48. ^ [1]
  49. ^ [2]
  50. ^ [3]
  51. ^ “TOSHIBACORPORATION-150914.pdf” (PDF). 株式会社東京証券取引所 (2015年9月14日). 2017年1月3日閲覧。
  52. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求に関するお知らせ省電舎ホールディングス 2018年8月31日
  53. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:(株)ディー・エル・イー東京証券取引所 2018年12月27日
  54. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:日本フォームサービス(株)東京証券取引所 2019年8月7日
  55. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:すてきナイスグループ(株)東京証券取引所 2019年9月19日
  56. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:ユー・エム・シー・エレクトロニクス(株)東京証券取引所 2019年12月18日
  57. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:第一商品(株)東京証券取引所 2020年7月10日
  58. ^ 株価指数算出上の取扱いについて(ハイアス・アンド・カンパニー)東京証券取引所 2020年11月27日
  59. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:テラ(株)東京証券取引所 2021年10月13日
  60. ^ 特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金の徴求:( 株)ジー・スリーホールディングス東京証券取引所 2022年3月31日
  61. ^ 宣誓書違反による再審査に係る上場廃止基準東京証券取引所
  62. ^ 「みなし譲渡損失の特例」について大和証券
  63. ^ 保有の株式が上場廃止となった場合、上場廃止後の取扱いはどのようになりますか?大和証券
  64. ^ 特定管理口座についてSMBC日興証券
  65. ^ 特定管理口座エイチ・エス証券
  66. ^ SankeiBiz、2012年11月8日(2014年2月26日閲覧)。

関連項目

外部リンク

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