一様可積分性(いちようかせきぶんせい、英: uniform integrability)とは、数学の実解析、関数解析学および測度論の分野における重要な概念で、ルベーグ可積分性の概念を拡張し、条件付き期待値やマルチンゲールの理論の発展のために重要な役割を担うものである。確率変数の収束において、この性質は、確率の意味において収束する確率変数が の意味において収束するための必要十分条件を与える。
形式的定義 次の定義が適用される[1]。
- 確率変数のクラス が一様可積分であるとは、 が与えられた時、 がすべての に対して成立するような が存在することを言う。ただし は指示関数
である。
- 二箇条を必要とするような、別の定義は次のようなものである: 確率変数のクラス が一様可積分であるとは、
- に含まれるすべての に対して、 となるような有限の が存在する。
- すべての に対してある が存在し、 となるようなすべての可測な および、すべての に対して、 が成立する。
- の二つが成立することを言う。
関連する系 次のような結果がある。
- 上の一つ目の定義は、次のような極限を用いることで書き換えられる:
-
- 確率変数 の列を考える。
と定義する。すべての n に対して であるため、明らかに である。しかし、上の一つ目の定義に従えば であることから、この数列は一様可積分ではない。すなわち、ルベーグ可積分ではあるが、一様可積分ではない。 一様可積分でない確率変数列の例。図の黒帯(strip)の部分は、
としても
へと向かう。
- 上の二つ目の定義によれば、 が有界でないときにはその第一箇条目は成立しないことが分かる。もし が一様可積分な確率変数であれば、
と区分し、それぞれを上から抑えることにより、その確率変数は に含まれることが分かる。また、任意の 確率変数は、上の二つ目の定義の第二箇条目を満たすことが分かる。 - 確率変数 のどのような列も、ある可積分な非負の によって支配されているなら、すなわち、任意の ω と n に対して、
が成立しているなら、確率変数 のクラス は一様可積分である。 - ( ) において有界な確率変数のクラスは、一様可積分である。
関連する定理 - (ダンフォード)(英語版)–(ペティス)(英語版)の定理[2]
- 確率変数 のクラスが一様可積分であるための必要十分条件は、それが弱位相において(相対コンパクト)(英語版)であることである。
- 族 が一様可積分であるための必要十分条件は、ある非負の増加凸関数 で
および を満たすようなものが存在することである。
確率変数の収束との関係 - 数列 が ノルムにおいて へと収束するための必要十分条件は、それが へと測度収束し、かつ一様可積分であることである。
- 確率の意味において収束する確率変数列が、期待値の意味においても収束するための必要十分条件は、それが一様可積分であることである。
脚注参考文献 - A.N. Shiryaev (1995). Probability (2 ed.). New York: Springer-Verlag. pp. 187–188. ISBN (978-0-387-94549-1)
- Walter Rudin (1987). Real and Complex Analysis (3 ed.). Singapore: McGraw–Hill Book Co.. p. 133. ISBN (0-07-054234-1)
- J. Diestel and J. Uhl (1977). Vector measures, Mathematical Surveys 15, American Mathematical Society, Providence, RI (ISBN 978-0-8218-1515-1)
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