ランブルストリップス(英: Rumble strips)は、主に自動車の路外逸脱や正面衝突を防止するための運転者への注意喚起、あるいは走行速度の抑制を目的として、道路の中央や路肩の路面上に意図的に波状面をつくり、この部分を通過する際に音と振動を与えるようにした交通安全施設。
同様の目的で設けられる交通安全施設として、道路鋲(チャッターバー、ロードスタッド)や車線分離標(センターポール、ポストコーン)、区画線の塗装面上に凹凸を設ける高視認性区画線などがあるが、ランブルストリップスはこれらとは異なり、道路のアスファルトやコンクリートの舗装面自体に直接加工を施すものである。
「がらがら、ごろごろと音を立てる」といった意味の rumble と、「細長い切れ」といった意味の strip を組み合わせた造語。日本国内においては、名称、仕組みとも法令等で定義されているものではない。
発祥と歴史
1955年にアメリカ合衆国ニュージャージー州で、橋梁の路肩のコンクリート舗装に波状の凹凸を施した“singing shoulders”が最初のランブルストリップスとされ、1960年代には各州でさまざまな形のものが開発された。1990年代に既設の舗装面を削る工法が開発されてから急速に普及している。
アメリカ合衆国では主に路外逸脱防止を目的として路肩に施工するものが多い。
イギリスでは車線全体に凹凸を施して走行速度の抑制をねらったものを指す。
北海道においては、都市間距離が北海道外と比較して2倍程度長く、また郊外路では片側1車線の対面交通が多いため、自動車事故全体に占める正面衝突の割合が全国平均 (11.5%) の2倍近く (22.5%) に及ぶ。交通量が少ないため中央分離帯の設置も費用に見合わず、また道路鋲や車線分離標では冬季に除雪車によって破壊されやすいため、これらに代わる有効な対策が求められていた。
2002年(平成14年)7月、独立行政法人(北海道開発土木研究所)(現・独立行政法人土木研究所寒地土木研究所)と国土交通省北海道開発局が、山越郡(現・二海郡)八雲町内の国道5号の直線区間約700メートルのセンターライン上に、正面衝突防止対策としてランブルストリップスを試験的に施工した。高い効果が認められたため、北海道開発局ではその後本格的に施工を進め、北海道内の国道では2013年(平成25年)3月現在で46路線、施工総延長は959キロメートルに達している。北海道内では国道以外の道道、市町村道、高速道路でも施工されるようになり、さらには東北、北信越といった積雪地域を中心に全国にも急速に普及している。また、センターラインだけではなく、路肩など他の区画線にも応用が広がっている。
施工方法
カム状の異形車輪を装着した路面切削用のカッターを周期的に上下させながら進むことで、一定間隔ごとに路面が切削される。施工機械は北海道開発土木研究所・NIPPO・ヴィルトゲン・ジャパンの三者共同で開発された。
仕様
当初の基本仕様は、幅350ミリメートル、延長方向に300ミリメートルごとに150ミリメートルずつ切削。溝の深さは二輪車ライダーのモニターの結果から12ミリメートルを採用。カーブ区間では二輪車の転倒を考慮し当初9ミリメートルを採用していたが、12ミリメートルに統一する方向にある。 現在は幅150ミリメートル型など、いくつかのタイプが派生している。
特徴
効果
アメリカ合衆国コロラド州で1997年に約27キロメートル区間のセンターラインに施工したところ、施工前後の各44か月間の比較で、正面衝突事故が約36%減少した。
北海道では2003年(平成15年)11月までに施工した24カ所、計約39キロメートル区間で、各所の施工前後の各2年間ずつを比較すると、正面衝突事故件数が42件から20件へ52%減少、それによる死者数が20名から6名へ70%減少した[1]。
また、北海道全体としては2005年(平成17年)の交通事故死者数が前年比85人 (22%) 減の302人と大幅に減って、都道府県別事故死者のワーストワンを14年ぶりに返上した。ランブルストリップスの事故防止への寄与と事故減少の直接的因果関係は立証され得ないが、この減少分のうちのいくらかにランブルストリップスの効果があったと推測できる。
なお、結果としてランブルストリップスを踏んでしまった際の効果はもちろん、「踏んだらガタガタするから」と分かっていると、なるべく踏まないように意識的に避けて通る傾向があることも、試験区間を撮影したビデオから分かっている。
「居眠り運転をして車線を逸脱した場合に、運転手が音と振動に驚いて起きるように設置されている」と語られることも多いが、そのような目的で作られたという明確な出典は無い。
脚注
関連項目
外部リンク
- ランブルストリップス(独立行政法人土木研究所寒地土木研究所)