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メイス

メイス: mace)は、殴打用の武器。打撃部分の頭部と柄を組み合わせた合成棍棒の一種である。日本語では鎚矛槌矛(つちほこ)、あるいは戦棍(せんこん)とも訳される。

出縁形メイス(インド・ペルシア)

概要

メイスは、棍棒から発達した武器で重量のある頭部の二つの部位からなり、複数の部品を組み合わせて構成される合成棍棒の一種である。棍棒と同様に殴打用の武器で、柄の先に重い頭部を有することにより単体棍棒より高い打撃力を生みだす事ができる。

メイスは通常、金属製の頭部と木製の柄からなるがのような自然物製の頭部をもつものや全金属製のものも作られている。特に金属製の頭部を持つメイスの打撃は強固なプレートアーマーに対し刃物類よりも有効で、出縁やスパイク、突起により衝撃点を集中し厚いプレートアーマーをへこませたり貫通したりすることができた[1]。そのため、プレートアーマーによる重武装化が進むと幅広く使用された[1]歩兵騎兵が使用するメイスは通常60センチメートルから90センチメートル程度だが、騎兵に対してはより長い物が使用された。特に歩兵が使う両手用のメイスには柄の長さが1メートルを越える種類もあった[1]。メイスは金属製殴打武器の代表的な存在であり、フレイルウォーハンマーなどを含む合成棍棒の総称として広義の意味で使われる場合がある。

中世ヨーロッパにおいて戦争に参戦した聖職者は「を流すことを禁じる」という戒律のため刀剣を扱うことを許されなかったため、血を流さないメイス(鈍器)を用いたとされる。

しかし、この戒律は聖職者の戦争行為への積極的な参加を禁じることで聖職がおろそかになることを防ぎ、政治謀略に巻き込まれないためのものであり、実際の聖職者たちは剣や槍など騎士とそう変わらない武器を用いた[2]

棍棒が暴力の象徴から権威の象徴となっていったように、メイスもまた権力の象徴として祭礼用の権杖(職杖)(英語版)を生んでいる。

剣などとは違い、斧やメイスはトップヘビーな武器で反応などは遅くなるが、それでも十分なスピードと機動力を持っていた[3]

また、棘付きのモルゲンシュテルンや(ホーリーウォータースプリンクラー)[4]などを除いて、打撃武器は殺傷力そのものは剣や槍などの刃物より劣っていたが[5][6]、鎧を着た敵にはどんな刀剣よりも破壊力を発揮した[7]

ほとんどのメイスはかなり短かったが、恐るべき威力を持った武器だった[8]

刀剣や弓矢と違い、扱うのに技術を要さないという利点もあった[8]

刀剣と同じく、主力武器ではなく補助武器としての意味合いが強かったものの、メイスは長い間コンパクトな武器として好まれた[9]

頭部はメイスの心臓部であり様々な形状をしている。下記では特に有名な物を記載する。

  • 球型頭部はメイスの基本の形と言え、サイズや形も多様である。円盤型や紡錘型をした亜種も存在する。特に巨大な球形頭部をもつメイスは球を空洞にし軽量化を図る事が多い。
    • 球型頭部に瘤やスパイクを放射状に取り付けたメイスは特に星型、モーニングスターと分類される場合もある。
  • たまねぎ型、あるいは洋梨型とよばれるメイスは、放射状に房が配置された形状をしている。原型はトルコだが主にハンガリーで使われた。
  • 出縁型頭部は、出縁(フランジ)をもった同形の金属片を放射状に組み合わせたもので、横から見ると菱形や方形をしている。軽量化と、衝撃の集中の両方を狙ったメイスで、特に(中世イタリア)やドイツで生み出された物が有名である。
  • 円柱型は、柄の先にさらに太い円柱状の頭部を備えたメイスで、大型のスパイクで補強されている。

歴史

古代

紀元前1万2000年頃に木や石や土器で頭部を作ったメイスが誕生しており、世界中で使用されている。しかし、自然物を素材としたメイスは、それほど重い頭部をもちえず、特に強力な武器とは言えなかった。革の鎧が使われるようになると、有効な打撃があたえられず武器の本流からは外れていった[1]

金属が発見された当初は、金属を塊に成形するだけで作成できるメイスは大いに使用されたが、冶金技術の発達で長い刃が成形できるようになると補助の武器の座へ戻っていった[1]

紀元前3000年頃メソポタミアでは自然物や青銅製のメイスが一般的な武器として用いられ、様々な形状や組み合わせが開発されている。武器の中心は軍の中核を成す戦車戦に向いた剣や刀、槍、弓に移っていくが、防具の重装化が早かったこともあり、メイスは中近東やイスラム世界では親しまれる武器となっていった[10][11]

モンゴル高原からキプチャク草原にかけてのステップ地域ではサカスキタイ、トルコ・モンゴル系の騎乗兵がメイスやウォーハンマー、ウォーピックを用いていた[10][1][11]

中国における錘(メイス)の歴史は古く、「史記」や「漢書」にも記載が存在し、唐代の史書にも記載がある[12]

錘は中国から北方や西方の遊牧民にも広まり、彼らにも好んで使用された。もっとも、多用されたのは宋代から元代、明代、清代にかけてである[12]

古代ギリシアローマでは斧や棍棒のような殴打武器を蛮族が持つ武器と見なす風潮があった事に加え、軍の中心となる歩兵の密集陣形ではメイスは使いにくいこともあり、使用されることはあまり無かった[13]。ただその後の東ローマ帝国の重装騎兵カタフラクトは予備武器に剣とメイスを装備していた[10][11]

インドでも(ガダ)(英語版)と呼ばれる頭部が丸く重い木製のメイスが使われていた。重量のバランスをとるため、両手で使われていた。

古代インドの戦士はアシヤシと呼ばれる刃の長さだけで140センチメートルを超える強力な両手剣を槍や盾と共に使用していたが、時に金属の輪をはめ込んだ棍棒を携帯することもあった[11][10][14]

日本において、槌を武器として使用した記録は、『日本書紀景行紀12年条に、碩田国直入県(現大分県直入郡)の禰疑野に住む土蜘蛛を倒すために、椿の木で槌を造り、強兵に授け、次々と打ち破らせたと記述され、一面血だまりになったことから、当時の人は、椿の槌(武器)を作った所を「つばき市(ち=血)」と呼んだと地名由来も記されている。

また、中国から輸入した長柄の戈を短い柄の武器にして盾と併用した[15]

古代においては鎧が未発達[16]な事もあり、剣や槍の方が好まれる傾向にあった[1][13]

日本でも中国でもヨーロッパでも打撃武器が重要視され始めるのは中世に入ってからである[6][1][17]

しかし、メイスは重防御の敵に対して効果的なために、古代からペルシア地方では人気のあった武器であった[2]

だが、中世の中東の兵士は十字軍の騎士よりも軽い鎖帷子で武装していたり、合成弓をメインウェポンとする騎馬弓兵(軽騎兵)が軍の中核であったがためにヨーロッパの騎士よりも軽装である傾向があった[8][18]

中世

10世紀頃からヨーロッパで、金属製鎧の発達[13]によりチェインメイルの防護面積が増え[19]、ビザンチン帝国では小さい金属札を綴ったラメラーアーマーが使用され[8]、13世紀には部分的な板金鎧が発生し、やがて板金で全身を覆うプレートアーマーへと発展していった[19]。これらの重装備に対して有効なメイスは戦場での重要度を増していった[3]

中近東では紀元前2千年紀から用いられ、イスラム世界でもメイスは一般的な武器で、マムルークなどが、刀、弓、メイスを好んで使用した。

東ヨーロッパの東ローマやロシア、ハンガリーでもメイスはよく用いられた。

北アジアの草原地域では、前3世紀に興った匈奴国や4世紀に猛威を振るったフン、7世紀に興った突厥国、13世紀に興ったモンゴル国などの重装騎兵が出縁型メイスで武装していた。

西ヨーロッパでは、11世紀から始まった十字軍においてイスラム世界に侵攻した際、その有効性を身を以て体験した。十字軍の騎兵は槍や剣や斧の他にメイスも使った[18][20]。時代と共に西ヨーロッパでも機能的なメイスが製造可能になり、14世紀にはイタリアドイツ地方でメイスは発達を見せ、出縁の物や、モルゲンシュテルンのような星型頭部のメイスが生み出されて、西ヨーロッパ各地へ広まり一般的な武器として使われるようになっていった[1]

中世中頃までのメイスは木製の柄に青銅製または鉄製の頭部をキャップのようにつけたもので、非常に軽量で単純な構造をしていたが、15世紀にはフランジド・メイスと呼ばれる金属板を複数枚、放射状に溶接した頭部を持つ全金属製のメイスが主流となる[3]。これらの武器で、馬上などの使用を考慮したものは片手でも扱える程度の重量と長さに抑えられている[3]

たいていの騎士は、徒歩の場合はベルトに挿すか、騎馬の場合には鞍の前輪からぶらさげていた[3]

騎士たちは時代にもよるが、槍(ランス)、盾と片手剣の他に、鞍の前輪からメイスまたは斧、さらには両手剣かロングソード(片手半剣)をぶらさげているのが一般的な装備だった[3]

東欧やイスラム諸国においてもメイスは人気の武器であった[1]。イスラムの重装騎兵は長柄のメイスを使い[20]、軽装騎兵も弓や槍、刀剣と共にメイスを使った[18]

10世紀以降の中世ヨーロッパにおいてメイスは鎧の発達[13]や剣が高価であるといった理由から騎士や兵士たちに剣よりも好まれる武器となっていた[8]

騎士や騎兵は剣も好んで用いたが、斧やメイスなどの打撃武器の方が効果的な武器となっていた[8]。特に板金鎧が発達していった13世紀以降に広く使われた[21]

メイスは殴るだけでなく、投げつけても恐ろしい威力を発揮した[8]

戦斧、ウォーハンマーやウォーピック、フレイルやモーニングスターといった、その他の打撃武器も騎士や兵士たちに剣よりも好まれていた[8]

両手用のメイスは、頭部に棘や出縁がついているかどうかにかかわらず、モールと呼ばれることがあった。この武器の威力はすさまじく、かなり容易に騎士を殴り倒すことが出来たが、効果的に使うにはかなりゆったりとした隊形を組むことが必要とされた[8]

しかし、鎖帷子の上にコートオブプレートを着込んだスタイル、およびプレートアーマーの重装備には斬撃だけではなく、打撃もほぼ通用せず、刺突が有効だとする説もある[22][23]

東アジア地域では、中国の春秋・戦国時代にメイスに相当する錘、モーニングスターに相当する「シュ」、フレイルに相当する多節棍が開発されている[17]。それ以外でも、唐の頃には、宋の頃には多節鞭(en:Chain whip)など独自の発達を遂げている[17]。最も、打撃武器が多用されたのは宋代から元代、明代、清代にかけてのことである[12]

日本では南北朝時代に鉞、棒や金砕棒、ツルハシや長柄の戈といった打撃武器が比較的よく使用された[24][25]

近世、近代、現代

近世ヨーロッパでパイク兵が戦場を支配していた頃はパイク兵が接近戦用のサブウェポンとして刀剣、メイス、短剣を装備していた[26]。しかし、銃の登場により、戦場から金属製の重い鎧は姿を消しメイスもそれに従って廃れていった[1]。近世ヨーロッパにおいては火器の発達により全身鎧が廃れていったため[19]、刀剣の方が好まれる傾向にあった(16世紀初めの歩兵にとって主な脅威は火縄銃ではなく、矛や刀剣類だった[27]。18世紀になっても騎兵用の刀剣は騎兵の攻撃・防御にもっとも有効な武器だった[26])。

制式な兵器としては消えたといっても殴るだけという単純さからメイス状の即席武器がしばしば使用される。たとえば第一次世界大戦塹壕戦、もしくは正式な量産品としては第二次世界大戦前後の日本、外地の日本人居留地の警備等で用いられた(甲型打撃棒)、(乙型打撃棒)が挙げられる。戦争用の武器という範疇を外れれば警棒として警察や警備員が幅広く持っている。また、儀礼用の職杖(en)は未だ多くの国々で使用されている。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h i j k 市川定春『武器と防具 西洋編』新紀元文庫。 
  2. ^ a b 長田龍太『続・中世ヨーロッパの武術』新紀元社、2013年9月14日(初版発行)、51頁、61頁、69頁。
  3. ^ a b c d e f 長田龍太『中世ヨーロッパの武術』新紀元社。 
  4. ^ リチャード・ホームズ『武器の歴史大図鑑』創元社。 
  5. ^ マーティン・J・ドアティ『SAS・特殊部隊式 図解実戦武器格闘術マニュアル』原書房。 
  6. ^ a b 戸田藤成『武器と防具 日本編』新紀元社。 
  7. ^ 『武器 歴史 形 用法 威力』マール社。 
  8. ^ a b c d e f g h i マーティン・J・ドアティ『図説 中世ヨーロッパ武器防具戦術百科』原書房。 
  9. ^ 『世界の武器・防具バイブル 西洋編』クリエイティブ・スイート。 
  10. ^ a b c d 市川定春『武器甲冑図鑑』新紀元社。 
  11. ^ a b c d 市川定春と怪兵隊『幻の戦士たち』新紀元文庫。 
  12. ^ a b c 林伯原『中国武術史』技藝社。 
  13. ^ a b c d 『武器の世界地図』文春新書。 
  14. ^ 『戦闘技術の歴史3 近世編』創元社。 
  15. ^ 『図解「日本の戦い方」』知的生きかた文庫。 
  16. ^ 『武器屋』新紀元文庫。 
  17. ^ a b c 篠田耕一『武器と防具 中国編』新紀元社。 
  18. ^ a b c 『図解 十字軍武器・防具・戦争大全』レッカ社。 
  19. ^ a b c 渡辺信吾『西洋甲冑&武具作画資料』玄光社。 
  20. ^ a b 『戦闘技術の歴史2 中世編』創元社。 
  21. ^ 『世界の武器・防具大辞典』双葉社。 
  22. ^ 『ビジュアル版中世騎士の武器術』新紀元社。 
  23. ^ 『本当にすごい!!本当に美しい 中世の武器』ダイアコレクション。 
  24. ^ 近藤好和『騎兵と歩兵の中世史』吉川弘文館。 
  25. ^ 樋口隆晴『歴史群像 武器と甲冑』歴史群像。 
  26. ^ a b ハーピー・S・ウィザーズ『世界の刀剣歴史図鑑』原書房。 
  27. ^ ゲーリー・エンブルトン『中世兵士の服装』マール社。 

関連項目

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