ポンジ・スキーム(英: Ponzi scheme)は、投資詐欺の一種。「出資してもらった資金を運用し、その利益を出資者に(配当金などとして)還元する」などと嘘を語り、実際には資金運用を行わず、後から参加する出資者から新たに集めたお金(の大半)を、以前からの出資者に向けて“配当金”などと偽って渡すことで、あたかも資金運用での利益を出資者に配当しているかのように装い、破綻することを前提に騙し取る手法[1][2]。
概要
名称は詐欺師チャールズ・ポンジ(Charles Ponzi)の名に由来する。「あなた(御社)のお金を運用して増やし、増えた分を(「配当」などとして)あなたに支払う」などと謳って、お金(出資金)を集め、そのお金は(全くあるいは殆ど)運用されず、大部分は詐欺師の懐に入り、以前からの出資者に(実際には「配当」ではなく、ただAさんのお金の一部をBさんに渡しているだけのお金を)"配当"と偽って渡すことで、さもまともな資金運用をしているかのように装う。詐欺師が巧みならば、しばらくの間は出資者の人数が増え続けて、詐欺師の側から見て入金の額が出金の額より多いので"出資者"たちを騙し続けることができるが、この詐欺システム全体では利益を生んでおらずシステム全体の負債が増え続け、やがて出資者の人数の増加が鈍化した段階でキャッシュ・フローが破綻し、"配当金"が工面できなくなり配当金の支払いの遅延が発生するようになり、一部の"出資者"が詐欺の可能性を疑うようになるが、そのころにはすでに手遅れで、この詐欺システムは大破綻し、"出資"したと信じていた人々のお金の大部分は"消え"てしまう。後から参加した出資者ほど損害は大きくなり、後半の出資者(人数は多く、その支払い総額は多い)は支払った"元本"の全部を失った上に"配当"もほとんど払ってもらえず終わり、最後の段階の出資者(人数が非常に多い)に至っては支払った"元本"も全額失った上に"配当"も一度も受け取れずつまり「丸損」となる。
抽象的な分類法としては、日本では投資詐欺の中でもその下位分類のひとつの「出資金詐欺」に分類される。
なお日本の報道の中でも、特に安直な報道(とりわけ制作者側のほうに物事の本質を詳細に分析する気が無い報道)では、「被害者をしばらくの期間騙すために、集めたお金の一部を"配当"と偽って会員に渡している」という当詐欺システムの特徴に焦点を当てず、別の側面(「会員が別の会員を勧誘するように誘導される」という特徴)に焦点を当てて「ネズミ講」(あるいは「無限連鎖講」)などと訳されてしまうことが多い。しかし実際にはこのポンジ・スキームは、ネズミ講に特徴的な階層的システムに依らない単純な手口を含むため[3][4]、実態と和訳とが乖離してしまう例もある((バーナード・L・マドフ#調査で明らかになった被害)を参照のこと)。名の由来となったチャールズ・ポンジの手法も、出資者から得た資金を配当に回す自転車操業的なシステムだった[5]。なお、「人と人の連鎖が、階層的で、末端ほど人数が多い」という特徴に焦点を当てる場合は「ピラミッド・スキーム(Pyramid scheme)」といい、一応、別概念である。たしかにポンジ・スキームでありなおかつピラミッド・スキームという性質を備えているパターンが多いが、ポンジ・スキームだがピラミッド・スキームでないパターン(新規会員の増え方が少なく、細々と運営される詐欺組織)も一部にある、ということなのである。
具体的な犯人名や事件名
- 19世紀
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- (フェルディナンド・ウォード)
- 1920年代
- 1930年代
- 1940年代
- 1980年代
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- (ドナ・ブランカ)
- Adriaan Nieuwoudt
- (ロン・リワルド)
- 1990年代
- 2000年代
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- ジェスティオン・プリヴェ・ジャポン - 1,600人から320億円を集めて破綻、社長の秦右時に懲役7年の実刑判決が下された[6]。
- バーナード・L・マドフ
- ワールドオーシャンファーム
- エル・アンド・ジー(円天)
- 2010年代
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- MRIインターナショナル
- 安愚楽牧場
- (Telexfree)
- (HYIP)
- 日経225先物アービトラージ詐欺事件 - Gackt、江角マキコらが被害者で被害総額100億以上。
- ジャパンライフ - 顧客約20人から約1億6千万円をだまし取り、元会長に懲役8年の実刑判決。
注釈
出典
関連項目
- 投資詐欺
- 蛸配当
- 積立投資
- (モノなしマルチ商法)
- バーナード・L・マドフ - 個人で最大規模であろう被害を生じさせたポンジ・スキーム詐欺の犯人。
- AIJ投資顧問
- MRIインターナショナル
- to rob Peter to pay Paul