ピアノソナタ第18番 ト長調 作品78 D 894 は、フランツ・シューベルトが作曲したピアノソナタ。初版譜に幻想曲と記載されていたことから『幻想ソナタ』の通称で呼ばれる。
概要
作曲者が28歳の時(1826年)の作品であり、このあとの同形式の作品は、晩年の3つのソナタ (第19番、第20番、第21番)しかない。完成された作風期に入り、規模も充実し、内容も優雅で遜色ない大作である。
ト長調は室内楽によく使われるなど柔和な印象を与えているが、同時代人のベートーヴェン作品の影響を色濃く感じさせる書法が多い。逆にベートーヴェン研究の観点からは「冗長で演奏効果が乏しいから」と評価されることが多いため、日本では作品に触れられる機会が少なかった。
曲の構成
- 第1楽章 モルト・モデラート・エ・カンタービレ
- ト長調、8分の12拍子、ソナタ形式。
- 発想記号の通り「ごく節度を持ってそして謡うが如く」演奏される。8分の12拍子であり、ベートーヴェンの『熱情ソナタ』の第1楽章と同一のリズムである。ベートーヴェンの作品では5対1の付点リズムが主要動機になっていたが、本作では更に鋭い対比をつけて11対1のものになっている。
- 冒頭から主題が提示されるが、平穏な曲想に作曲者のクラフトマンシップが隠れている。第2主題はベートーヴェンの交響曲第7番にも現れる優雅なシチリアーノ。素朴な変奏の後に提示部が終わり、展開部に入る。展開部はト短調、ニ短調など短調の昂揚があった後、第2主題が変ロ長調で左手声部に現れる。右手声部は同時に第1主題を奏でていて、各主題を統合した優れた作曲技術が認められる。
- 再現部は形式通り。コーダでも『熱情ソナタ』に似て最弱音で穏やかに締めくくっている。
- 第2楽章 アンダンテ
- 第3楽章 メヌエット (アレグロ・モデラート) - トリオ
- 第4楽章 アレグレット