ピアノソナタ第16番 (シューベルト)

ピアノソナタ第16番 イ短調 作品42, D 845 は、フランツ・シューベルトが1825年5月に作曲したピアノソナタ。ルドルフ・ヨハネス・フォン・エスターライヒに献呈された[1]。

概要

シューベルトの中間期の作であり、作曲家としてはわずか12年程度の創作人生しかない中での数少ない完成されたピアノソナタの一つである。作曲の翌年（1826年）にピアノソナタとしては初めて出版された[1]。

これまでのソナタにおける3楽章制とは一転して4楽章構成であり、シューベルトはこのソナタ以降一貫して4楽章制を取り続けることになる[1]。

曲の構成

第1楽章 モデラート

イ短調、2分の2拍子（アラ・ブレーヴェ）、ソナタ形式^[1]。

 

両手の斉唱で開始し、このユニゾンは楽章全体を覆っている。演奏自体は比較的平易であるが、左手のE音のシンコペーションが時に不気味な演出をする。展開部で16分音符による急速な部分が出現するが手短に済ませている。

全体的に緩やかなユニゾンが多く、管弦楽編曲の草稿ではないかと考えられる部分が多い。また、主題を半音下げて再現するのは最後のピアノソナタである第21番（D 960）の最終楽章と同様の手法である。

第2楽章 (アンダンテ)・ポコ・モッソ^[1]（アンダンテ・ポコ・モート^[2]）

ハ長調、8分の3拍子、変奏曲形式[1]。

 

途中で遠隔調である変イ長調の音階進行による変奏を入れていて、ロマン派作家の特徴を出している。

第3楽章 スケルツォ：(アレグロ)・(ヴィヴァーチェ) - トリオ：ウン・ポコ・(ピウ)・(レント)

イ短調 - ヘ長調、4分の3拍子[1]。

 

転調の末にイ長調になるが、調性が極めて不安定である。

第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ

イ短調、4分の2拍子、ロンド形式[1]。

 

これまでの楽章同様、調性は転調が多く不安定。最後に第1楽章の動機が現れ加速して終わる。時に「シューベルトの音楽は片目で笑い片目で泣いている」と評される通り、長調と短調が混在している。

本楽曲が使われた作品

• のだめカンタービレ - 漫画版のマラドーナ・ピアノ・コンクール（Lesson 43-44）においてのだめが演奏し^{[注 1]}、その後Lesson51、66、86においても演奏している。テレビドラマ版では、第9話と第11話で使用された。

注釈

1. ^ 当初のだめは、シュベルト〔ママ〕は気難しい人みたいでがんばって話しかけてもなかなか仲良くなれません。^[3]と千秋真一にメールで語っているが、シュベルトは本当に『気難しい人』なのか？自分の話ばかりしてないで、相手の話もちゃんと聴け！楽譜と正面から向き合えよ。^[4]との返信を受け、苦手意識を克服している。また、コンクールでの本楽曲の演奏が、シャルル・オクレールに見出され、コンセルヴァトワールに留学するきっかけとなった。

出典

1. ^ ^{a b c d e f g h} 稲田 2007.
2. ^ Johnston n.d.
3. ^ 二ノ宮 2004, p. 104.
4. ^ 二ノ宮 2004, p. 117.

参考文献

• 二ノ宮, 知子『のだめカンタービレ』 8巻、講談社〈(講談社コミックスキス)〉、2004年3月。ISBN (4-06-340476-5)。 
• 稲田, 小絵子 (2007年6月1日). “シューベルト :ピアノ・ソナタ　第16番 D 845 Op.42 イ短調”. ピティナ・ピアノ曲事典. 全日本ピアノ指導者協会. 2021年12月30日閲覧。
• Johnston, Blair. “Piano Sonata No. 16 in A minor, D.”. AllMusic. NetAktion. 2021年12月30日閲覧。

外部リンク

• ピアノソナタ第16番 イ短調 作品42, D 845の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
• Performance by Seymour Lipkin from the (Isabella Stewart Gardner Museum) in MP3 format