ザ・トルネイドース (The Tornados)[1]は、1960年代初頭に活動していたイギリスのインストゥルメンタル・バンド。イギリスの名プロデューサー、ジョー・ミークのプロデュースの下、1962年に「テルスター」を爆発的に大ヒットさせた。
テルスター録音時のメンバー
ザ・トルネイドースのメンバーは一定せず、メンバーの入れ替わりが顕著である。ここでは「テルスター」の録音時に在籍していたメンバーのみ記載する。
- ジョージ・ベラミー (George Bellamy) - リズム・ギター担当。1962年から1963年まで在籍。
- ハインツ・バート (Heinz Burt) - ベース担当。1960年から1963年まで在籍。
- 詳細は本人の項を参照。
- アラン・キャディ (Alan Caddy) - リード・ギター担当。1962年から1965年まで在籍。
- ロジャー・ラヴァーン (Roger LaVern) - オルガン担当。1962年から1965年まで在籍。
- クレム・カッティーニ (Clem Cattini) - ドラムス担当。1960年から1965年まで在籍。
- 1938年8月28日、北ロンドンのストーク・ニューイントン生まれ。本名:Clemente Anselmo Arturo Cattini。セッション・ミュージシャンを経てアラン・キャディと同じくに加入。その後、トルネイドースに加入。「テルスター」録音時のメンバーの中で一番長く在籍していた。その後も、67年にはジェフ・ベック・グループの結成メンバーやセッション・ミュージシャンとして数々のバックを務め、また、加入には至らなかったがレッド・ツェッペリンの結成に当たってドラマー候補にも挙げられている。1980年代にはトルネイドースの再結成にも参加している。
来歴
テルスター以前の活動
トルネイドースは、イギリスの名プロデューサー、ジョー・ミークがセッション・ミュージシャンを寄せ集めて、結成された[2]。結成当初はスタジオ・ワークだけを行っていたが、イギリス・ロックの御三家の一人、ビリー・フューリーのバックバンドを担当するようになる。やがて独立し、レコード・デビューも行う。ジョー・ミーク作の「ラヴ・アンド・フューリー」でデビューを果たしたが、ヒットには結び付かず、失敗に終わった。
テルスターの成功
1962年、トルネイドースとミークに転機が訪れる。同年、テルスター衛星が打ち上げられ、それを記念してミークの手により「テルスター」が作られる。ある夜自宅にいたミークは、突然神様から授かったかのようにメロディーを思いつき、それを忘れないために手元にあった灰皿にメロディーを書き殴り、そのまま自宅のスタジオのテープレコーダーで自らのハミングでメロディーを記録したという。当時、インストゥルメンタル・バンドには珍しい、オルガンが大部分のソロ・パートを担当するだけではなく、極めて機械的でスペーシーな音を出すクラビオリンという楽器が使われている。それに加え、ミークの、時代を超えたミキシングにより、とても1960年代初頭に作られたとは思えない、極めて宇宙的な楽曲を、ミークとトルネイドースは創り上げてしまったのである。後に、スペース・ロックと呼ばれるジャンルをこの曲で作ったのである。
この曲はこの年の8月17日にまずイギリスで発売され、ちょうどスプートニク1号打ち上げから5周年となる10月4日、イギリス国内のチャート1位を記録、しかし快進撃はこれだけに留まらず、大西洋を越えたアメリカのビルボードHOT100でも12月22日[3]から3週連続1位を記録した。イギリスの歌手・バンドがアメリカのチャート・トップを独占したという快挙を成し遂げた瞬間でもある。ザ・ビートルズもアメリカのチャートに入る前の事である。結局この曲は日本も含め全世界で500万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。
ミークはこの「テルスター」以前にも、(ジョン・レイトン)の「霧の中のジョニー」をミキシング、プロデュースし、イギリスのチャートの1位を記録したので、「テルスター」は2度目の大成功とも言える。後にザ・ベンチャーズや、事実上ライバル視していたシャドウズ等、多数のグループにカバーされることとなった。
その後
「テルスター」の大ヒット後も、「グローブトロッター」や「ロボット」でヒットを飛ばす。また、後にミュージック・ビデオと呼ばれる、「スコーピトン・フィルム」も「テルスター」と「ロボット」で作っている。「ロボット」ではメンバーがロボットに扮し、演奏している。
ヒットが出ず、カッティーニ脱退後もメンバーを替え活動していたが、1967年解散。その後1975年、ベラミー、バート、ラヴァーン、カッティーニの四人で「テルスター」を再録音している。
なお、テルスター当時の5人は脱退後の1965年に再集結し、「トルネイドーズ」の名前をミークが権利を持っていたために使えず「ザ・ジェミニ(The Gemini')」名義でシングル「Spacewalk / Goodbye Joe」を発売している。発売に先駆けてジェミニ4号の飛行でアメリカ初の宇宙遊泳が行われており、グループ名とタイトル曲はこの計画にあやかったものと思われる。
代表曲
- ラヴ・アンド・フューリー (Love and Fury)
- テルスター (Telstar)
- グローブトロッター (Globetrotter)
- 空を飛ぶ恋 (Ridin' the wind)
- ロボット (Robot)
- ドラゴンフライ (Dragonfly)