デイノスクス(学名:Deinosuchus)は、約8,000万- 7,300万年前(中生代白亜紀末期カンパニアン- マストリヒシアン)の北アメリカ大陸に棲息していた、既知で史上最大級のワニ。正鰐類ワニ目アリゲーター上科に分類される肉食性爬虫類。テキサス州の(ペロー自然科学博物館)に保存の良い完全な頭蓋骨が存在する[1]。
呼称
学名は古代ギリシア語: δεινος (deinos) 「怖ろしい」 + σουχος (souchos) 「ワニ」の合成語[2]。日本語では仮名つづり上の類似から「ディノスクス」などとも呼ばれることがあるが、本来は「ディノ…」ではなく「デイノ…」が正しい。英語では、「ダイノスーカス」に近い発音をするのが一般的である。
本属のシノニムには、Polydectes(ポリデクテス)と Phobosuchus(フォボスクス)がある。
特徴
現在のところ発見されているのは保存のいい完全な全長約180センチメートルの頭蓋骨のみで、他に発見されたのは脊椎や肋骨などの一部であるが、その大きさから全長は最大12メートルほどに達するのではないかと推測され、史上最大のワニの一つとされてきた。しかし、最近の研究によればその数値は過大なものではないかともされ、10メートル程度だったとする説もある。また、現世に存続するイリエワニも大型の個体では6メートルを超えるものも存在する。骨の研究も行われ、その結果、寿命は約50年と推測され、その頭蓋骨は現生のワニ同様に骨性二次口蓋を具えていた。
巨大なワニ形類としてはほかにもサルコスクスやプルスサウルスなどが発見されているが、どれが最大種であるのかについては判断するに足る確実な情報が乏しく、ゆえに不明である。ただし、デイノスクスの全長がサルコスクスと同等かそれ以上であれば、質量面ではより細身のサルコスクスを上回ると考えられる。
生態
現生のワニ類と同じく、水際に潜んで獲物を狙う捕食動物であり、魚を始めとする水棲動物のほか、水辺に近づくハドロサウルス類などの植物食恐竜等の陸棲動物も獲物にしていたと思われる。また、噛みつく力は非常に強く、ティラノサウルスと同等かそれ以上の咬合力があったのではないかと推測されている。
しかし一方で、近縁のアリゲーターより若干胴が短く、四肢が長いことから、陸上と水中の両方で棲息していた可能性も指摘されている。
脚注
- ^ “"Super-Croc"” (英語). ビッグ・ベンド国立公園. 2017年5月24日閲覧。
- ^ ギリシア語 δεινος は「恐竜」を意味する Dinosauria、英語: dinosaur の前半にも現れている。deino-/dino- の違いはギリシア語を転写する方法の違いによるもの。 → 英語版 Romanization of Greek#Ancient Greek を参照。生物種名におけるギリシア語の翻字はおおむねこの表の Classical (2列目)に相同だが、ときに ALA-LC (3列目)と同様の方式が使われることもある。
参考文献
は列挙するだけでなく、(脚注)などを用いてしてください。 |
- ヘーゼル・リチャードソン、デイビッド・ノーマン(監修)『恐竜博物図鑑』出田興生(訳)、(新樹社)〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年。ISBN (4-7875-8534-7)。
関連項目
- (絶滅した動物一覧#白亜紀(1億4,500万~6,600万年前))
- ワニ
- 主竜類
- サルコスクス :白亜紀前期後半のアフリカ大陸に棲息していた、史上最大級のワニ(中鰐類)。
- イリエワニ :現代最大のワニ。
- アリゲーター上科