タリウム205 (Thallium-205・205Tl) とは、タリウムの同位体の1つ。
概要
205Tlは、タリウムの安定同位体の1つであり、タリウムの約70.5%が205Tlで構成されている。残りの約29.5%は(203Tl)である[1]。
205Tlの親核種には209Biがある。これは後述する崩壊系列に関わるものである。また、ポロニウムで最も半減期の長い同位体である209Poは、(205Pb)を経由して205Tlに変化する。そのほかに(205Hg)のベータ崩壊がある[1][2]。また、205Tlには核異性体である(205mTl)があり、0.000026秒で(核異性体遷移)を起こす[1]。
崩壊系列
205Tlは、241Puから始まり、237Npを経由する崩壊系列であるネプツニウム系列で最終的に生じる安定同位体である。かつては209Biが最終的に生じる安定同位体とされていたが、2003年になって209Biがアルファ崩壊することが確かめられたため、205Tlに座を移すことになった。ただし、209Biは半減期が1900京年と、安定同位体と見なせるほど非常に長いものであるため、実質的には209Biが最終と考えても差し支えない[1][2]。
タリウムの安定同位体である205Tlと203Tlの親核種は、そのほとんどは天然に存在しない核種であり、非常に長い半減期を持つ209Biの影響も小さい。複数の崩壊系列で同位体の量が変化する鉛とは異なり、標準原子量は不変であると見なせる。実際、タリウムの標準原子量は鉛のそれより精度が1桁上回っている。