スープカレーは、日本のカレー料理のひとつ。スパイスの香り・刺激・辛みのきいたスープと、大振りの具が特徴である。2000年代に札幌市でブームとなり、その後全国に広まった。
概要
札幌市には現在でもスープカレーを提供する店が200店以上存在する。各店は個性を競い合っており、多様なバリエーションがある。北海道の函館、旭川、帯広、富良野はもちろん、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡など日本各地に札幌由来の店が出店しており、香港、シンガポール、バンコクなど海外にも進出している。
札幌スープカレー
1971年に札幌市に開店した喫茶店『アジャンタ』が1975年ごろに発売した「薬膳カリィ」が原型と言われている[1]。
サラサラとした粘り気のないスープ状のカレーである。これに似た自分の店の料理を「スープカレー」と命名し、評判になったのは1993年に札幌市白石に開店した「マジックスパイス」である[2]。同店は2003年に神奈川県の「横濱カレーミュージアム」に出店して大評判になり、札幌発のスープカレーが全国に知られるきっかけになった[3]。その後、札幌発のスープカレー店が各都市に進出し、大手牛丼チェーンやファミリーレストラン、コンビニエンスストアでもスープカレーが販売された[4]。
2017年の『ミシュランガイド北海道 2017 特別版』に『カレー食堂 心』ほか7店が掲載された[5]。
特徴
- スパイスの効いた旨みのあるスープと、大ぶりの具。
- 煮込み料理と違って、スープと具は別々に調理する。メインの具はもともとチキンレッグが基本だったが、現在ではほかに豚角煮・ラムチョップ・魚介類などを選択できる店が増えている。これに茹でたり素揚げしたジャガイモ、ニンジン、ナス、ピーマン、オクラ、カボチャ、ゴボウ、ヤングコーン、ブロッコリー、レンコンなどの野菜が組み合わされる。
- 「トマト系スープカレー」では、フォン・ド・ボー(仔牛のダシ)を使ったり、炒めたバジルとその香味オイルをたっぷり浮かべることが多い。
源流店
以下の店舗がスープカレーの源流店と考えられている。
- アジャンタ薬膳カリィ店[6]
- スープカレー店の多くの店主が「大きな影響を受けた店」として名前を挙げている店である[7]。店主の辰尻宗男(1934年〜2009年)は薬売りの行商で知られる富山県の生まれで、幼少期に札幌に移り住んだ。両親は薬局を営んでいた。1971年に喫茶店を開店。家に伝わっていた漢方の養生食とインド料理を融合した「薬膳カリィ」を考案し、一日20食限定で出したところ、口コミで評判となった。はじめは具無しのスープとライスだったが、1975年に「もったいないから出汁に使った鶏肉も出して」という客のリクエストによりチキンレッグを入れ[2]、つづいて大振りのニンジンとピーマンも加えるようになった。これがのちのスープカレーの原型となった。
- スリランカ狂我国[6]
- 1984年に開店。インドに近い島国で出汁文化が日本と共通するスリランカのカレーを日本に紹介したごく早い例である。
- 木多郎[2][6]
- 1985年に開店。素揚げ野菜をトッピングするスタイルを考案。「トマト系スープカレー」のルーツでもある。
- マジックスパイス[2][6]
- 1993年に開店。初めて「スープカレー」という商品名を使った。インドネシアの「ソトアヤム」の要素を取り入れた独特のカレーが人気となり、スープカレーブームを牽引する役割を担った。
後続店
関連項目
- カレー賛昧 - 2002年から2011年まで毎年発売されていた札幌スープカレー店のガイドブック。最新刊は2015年。
出典
- ^ 杉浦美香 (2018年1月2日). “「おせちもいいけどカレーもね!」お正月に探る札幌名物、スープカレー ルーツは“薬”だった?!”. 産経ニュース. p. 1. 2018年10月2日閲覧。
- ^ a b c d 樺沢紫苑『北海道スープカレー読本』亜璃西社、2004年。ISBN (978-4900541542)。
- ^ 井上 2007, p. 173.
- ^ 井上岳久「ブームは誰が仕掛けたか」『カレーの経営学: 勝ち続ける驚異のしかけ・ノウハウ』東洋経済新報社、2012年。ISBN (9784492502334)。
- ^ 『ミシュランガイド北海道 2017 特別版』日本ミシュランタイヤ、2017年。ISBN (978-4904337226)。
- ^ a b c d 樺沢 2004, p. 184.
- ^ 樺沢 2004, p. 202.
- ^ 大谷修一 (2017年7月17日). “札幌スープカレーの歴史とおすすめの名店3選”. All About. p. 2. 2018年10月16日閲覧。