スペンサー・ロバート・ストライダー(Spencer Robert Strider, 1998年10月28日 - )は、アメリカ合衆国オハイオ州コロンバス出身のプロ野球選手(投手)。右投右打。MLBのアトランタ・ブレーブス所属。
経歴
プロ入り前
2017年に(クリスチャン・アカデミー・オブ・ノックスビル )の投手としてMLBドラフト35巡目(全体1062位)でクリーブランド・インディアンスから指名されたが、この時は契約せずにクレムゾン大学へ進学した。
2018年にクレムソン・タイガースの投手として22試合に登板したが、トミー・ジョン手術が必要な肘尺側側副靭帯断裂を負い2019年のシーズンを通して欠場。しかし、この間を使い大学のスポーツ心理学者と精神面の強化を、ストレングス及びコンディショニング・ディレクターと下半身の強化に取り組んだ。ストライダーはこの時間が成長に欠かせなかったと語っている。2020年シーズン中に怪我から復帰、4試合に先発登板した[2]。
プロ入りとブレーブス時代
2020年のMLBドラフト4巡目(全体126位)でアトランタ・ブレーブスから指名され[3]、プロ入り。同年は(COVID-19の影響)でマイナーリーグのシーズンが中止となり[4]、公式戦への出場はなかった[5]。
2021年はA級(オーガスタ・グリーンジャケッツ)で開幕を迎え[5]、A+級(ローム・ブレーブス)、AA級ミシシッピ・ブレーブス、AAA級グウィネット・ストライパーズとトントン拍子に昇格[5]。マイナー4球団で22試合(うち先発21試合、94イニング)に登板し、3勝7敗、防御率3.64、153奪三振という成績を残した[6]。10月1日にメジャー契約を結び、同日のニューヨーク・メッツ戦でメジャー初登板を果たした[5]。
2022年は開幕を救援投手として迎え、5月30日から先発ローテーションに入った[7]。9月1日のコロラド・ロッキーズ戦で8回16奪三振を記録し、延長戦を除いた1試合における球団最多奪三振記録を達成した[8][9]。9月18日に「シーズン200奪三振を130.0投球回で達成」しMLB史上最速記録を更新、同時に1900年以降の近代野球においてブレーブスのルーキー初となるシーズン200奪三振も達成した[10][11][12]。オフの10月10日、ブレーブスと2028年シーズンまで6年7500万ドルの延長契約を結んだ(2029年シーズンは2200万ドルのクラブオプション)[13]。11月14日、ナ・リーグ最優秀新人選手賞(新人王)の投票結果が発表となり第2位に選出(新人王を受賞したのはチームメイトのマイケル・ハリス2世であり、同一球団から1位と2位が選出されたのは同じくブレーブスのクレイグ・キンブレルとフレディ・フリーマンが選ばれた2011年以来4組目)[14][15]。また同年3月に合意された統一労使協約の特別ボーナス制度により、ア・リーグ新人王投票で同じく第2位に選出されたアドリー・ラッチマンと共に50万ドルのボーナスを取得した[16]。
人物
トミー・ジョン手術のリハビリ中に炎症を抑える目的に加え、18歳の時に高血圧と診断された事もあり、2019年からヴィーガンとして食生活を開始し現在も続けている。ストライダーは「高血圧で薬を飲んでいたけれど、アスリートとして薬に頼りたくないと思ったんだ。植物性の食事を始めてから2週間で血圧が正常になり、それ以来何の問題もない。それからトミー・ジョン手術から後戻りすることなく11ヶ月でリハビリを終えた。食事がすべてだとは思わない、でもそれを始めて以来順調だしこれからも続けていきたい」と語っている[17]。
投球スタイル
球種 | 割合 | 平均球速 | 最高球速 | ||
% | mph | km/h | mph | km/h | |
フォーシーム | 78.4 | 97.9 | 157.6 | 100 | 160.9 |
スライダー | 21.6 | 85.5 | 137.6 | 87.4 | 140.7 |
大学時代の球種は(ツーシーム)、スライダー、チェンジアップであったが、トミー・ジョン手術から回復した2020年に投球スタイルを変化させた。(フォーシーム)を積極的にストライクゾーン上部に投げ込み始め球速も向上、翌2021年夏にはスライダーとチェンジアップの改善にも力を入れた[18]。メジャーに定着した2022年シーズン、スタットキャストにおいてフォーシームの平均球速が98.2mph(約158.0km/h)に到達すると、7月2日のレッズ戦では2008年にMLBがトラッキングデータの収集を開始して以降、先発投手の投球において過去最速となる102.4mph(約164.8km/h)を計測した[19][20]。
詳細情報
年度別投手成績
年 度 | 球 団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2021 | ATL | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 9 | 2.1 | 2 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 3.86 | 1.29 |
2022 | 31 | 20 | 0 | 0 | 0 | 11 | 5 | 0 | 2 | .688 | 528 | 131.2 | 86 | 7 | 45 | 1 | 3 | 202 | 6 | 0 | 42 | 39 | 2.67 | 0.99 | |
MLB:2年 | 33 | 20 | 0 | 0 | 0 | 12 | 5 | 0 | 2 | .706 | 537 | 134.0 | 88 | 8 | 46 | 1 | 3 | 202 | 6 | 0 | 43 | 40 | 2.69 | 1.00 |
- 2022年度シーズン終了時
年度別守備成績
- 2022年度シーズン終了時
表彰
- プレイヤーズ・チョイス・アワーズ:優秀新人(2022年)
- ルーキー・オブ・ザ・マンス:1回(2022年7月)
脚注
- ^ “Spencer Strider Contract Details, Salaries, & Earnings” (English). Spotrac. 2022年10月15日閲覧。
- ^ Todd Shanesy (2022年6月11日). “Atlanta Braves pitcher Spencer Strider credits Clemson for his development while injured”. Greenville News. 2022年6月22日閲覧。
- ^ Will Vandervort (2020年6月12日). “Strider admits he was surprised to hear his named called in MLB Draft” (英語). The Clemson Insider. 2021年6月20日閲覧。
- ^ “2020 Minor League Baseball Season Shelved”. MiLB.com (2020年6月30日). 2020年7月1日閲覧。
- ^ a b c d MLB公式プロフィール参照。2022年6月22日閲覧。
- ^ Steve Adams (2021年10月1日). “Braves Promote Spencer Strider”. MLB Trade Rumors. 2022年6月22日閲覧。
- ^ “Michael Harris II, Spencer Strider key rookie duo for Braves” (英語). MLB.com. 2022年12月28日閲覧。
- ^ 延長戦を含めた球団最多はウォーレン・スパーンが1952年に記録した15回18奪三振。
- ^ “Spencer Strider strikes out 16 in win vs. Rockies” (英語). MLB.com. 2022年12月28日閲覧。
- ^ シーズン200奪三振到達における、これまでのMLB最速記録はランディ・ジョンソンが2001年に達成した130.2投球回。
- ^ “Spencer Strider becomes fastest pitcher to 200 strikeouts” (英語). MLB.com. 2022年12月28日閲覧。
- ^ “Braves’ Spencer Strider surpasses 200 strikeouts, mows down hitters at record pace” (英語). The Athletic. 2022年12月28日閲覧。
- ^ “Spencer Strider signs six-year deal” (英語). MLB.com. 2022年12月28日閲覧。
- ^ 全米野球記者協会(BBWAA)から1位票が8、2位票が21、計103ポイントを獲得。
- ^ “Braves outfielder Michael Harris II wins battle of teammates for NL Jackie Robinson Rookie of the Year” (英語). BBWAA – Baseball Writers' Association of America (2022年11月14日). 2022年11月15日閲覧。
- ^ 菊地慶剛 (2022年11月15日). “新人王受賞者にMLBから75万ドルを支給!今季から導入された特別ボーナス制度の中身”. 2022年11月16日閲覧。
- ^ David O'Brien (2022年5月27日). “Braves pitcher Spencer Strider partly credits vegan diet for his success” (英語). The Athletic. 2022年12月28日閲覧。
- ^ “Spencer Strider progressing fast for Braves” (英語). MLB.com. 2022年12月28日閲覧。
- ^ “Rob Friedman's official Twitter Dated July 3, 2022” (英語). Twitter. 2022年12月28日閲覧。
- ^ “Atlanta Braves rookie Spencer Strider hits 102.4 mph on fastball” (英語). USA TODAY. 2022年12月28日閲覧。
関連項目
- メジャーリーグベースボールの選手一覧 S
- (トミー・ジョン手術を受けた野球選手一覧)
外部リンク
- 選手の通算成績と情報 MLB、ESPN、Baseball-Reference、Fangraphs、The Baseball Cube、Baseball-Reference (Register)
- Spencer Strider stats MiLB.com (英語)
- Spencer Strider (@SpencerSTRIDer) - Twitter
- Spencer Strider (@spencerstrider) - Instagram