ジャン=クロード・カリエール(Jean-Claude Carrière、1931年9月17日 - 2021年2月8日)は、フランスの脚本家、俳優、著作家。
来歴・人物
大学在学中に作家を志し、ジャック・タチ監督の作品、『ぼくの伯父さんの休暇』のノベライゼーション(小柳帝訳、中公文庫、2008年)を執筆。
同書のイラストを描いた、タチの助監督でもあるピエール・エテックスと意気投合し、大学を中退し、1961年、エテックスと共同で脚本を執筆し、エテックスが監督した短編映画『Rupture(破壊)』で脚本家デビュー。1962年には『幸福な結婚記念日』でアカデミー短編映画賞を受賞する。続いて、『女はコワイです』(1962年)そして『ヨーヨー』(1964年)と、カリエールの監督作で共同脚本を行う。
1963年には、ルイス・ブニュエル監督と出会い、没するまでの約20年間に、『小間使の日記』の脚本を始め、ブニュエルの後期傑作群『昼顔』、『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』、『欲望のあいまいな対象』などの脚本を手がける。『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』ではアカデミー脚本賞にノミネートされた。
他に、ルイ・マルの『ビバ!マリア』、フォルカー・シュレンドルフの『ブリキの太鼓』、ミロス・フォアマンの『パパ/ずれてるゥ!』と『宮廷画家ゴヤは見た』、アンジェイ・ワイダの『ダントン』、大島渚の『マックス、モン・アムール』、フィリップ・カウフマンの『存在の耐えられない軽さ』、ジャン=ポール・ラプノーの『シラノ・ド・ベルジュラック』などの100本以上の脚本を執筆。
また、イギリスの演出家、ピーター・ブルックのために30年間にわたって、舞台台本を執筆。インドの長大な叙事詩『マハーバーラタ』を脚色し、9時間上演版を作った事も著名(笈田勝弘・木下長宏共訳、白水社、1987年)。
2007年にはコペンハーゲン国際映画祭において、生涯功労賞を授与された。2014年、アカデミー名誉賞を受賞。
他の日本語訳書に近年は、イタリアの作家・哲学者のウンベルト・エーコと共著で『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』がある(工藤妙子訳、阪急コミュニケーションズ, 2010年12月)。
フィルモグラフィー
映画
- 昼顔(1967年) - 脚本
- 太陽が知っている(1969年) - 脚本
- ボルサリーノ(1970年) - 脚本
- パパ/ずれてるゥ!(1971年) - 脚本
- ひきしお(1972年) - 脚本
- ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972年) - 脚本
- 欲望のあいまいな対象(1977年) - 脚本
- ブリキの太鼓(1979年) - 脚本
- 勝手に逃げろ/人生(1980年) - 脚本
- ダントン(1983年) - 脚本
- マックス、モン・アムール(1986年) - 脚本・原案
- 存在の耐えられない軽さ(1988年) - 脚本
- 恋の掟(1989年) - 脚本
- シラノ・ド・ベルジュラック(1990年) - 脚本
- カサノヴァ最後の恋(1992年) - 脚本
- 欲望の華(1994年) - 脚本・出演
- 魔王(1996年) - 脚本
- チャイニーズ・ボックス(1997年) - 脚本
- 記憶の棘(2004年) - 脚本
- 宮廷画家ゴヤは見た(2006年) - 脚本
- トスカーナの贋作(2010年) - 出演
- 永遠の門 ゴッホの見た未来 (2018年) - 脚本
テレビ映画
- 王妃マリー・アントワネット(2006年) - 脚本
邦訳された著書
- 恋のメモランダム ジャン・クロード・カリエール 作,(浜文敏) 訳 白水社 1984
- マハーバーラタ ジャン=クロード・カリエール 作,笈田勝弘, 木下長宏 共訳 白水社 1987
- ぼくの伯父さんの休暇 ジャン=クロード・カリエール 作,小柳帝 訳 リブロポート 1995
- 万国奇人博覧館 ギィ・ブクテル ,ジャン‐クロード カリエール (著), (守能信次)訳 筑摩書房 1996 のちちくま文庫
- ダライ・ラマが語る : 母なる地球の子どもたちへ ダライ・ラマ14世, ジャン=クロード・カリエール [著],(新谷淳一) 訳 紀伊國屋書店 2000
- 珍説愚説辞典 J.C.カリエール, G.ベシュテル (著), 高遠弘美 (訳) 国書刊行会 2003
- ぼくの伯父さんの休暇 ジャック・タチ 原案,ジャン=クロード・カリエール 著,小柳帝 訳 中央出版アノニマ・スタジオ 2004
- 教えて!!Mr.アインシュタイン ジャン=クロード・カリエール 著,(南條郁子) 訳 紀伊國屋書店 2006
- 記憶の棘 ジョナサン・グレイザー, ジャン=クロード・カリエール, (マイロ・アディカ) 著,(富永和子) 訳 ランダムハウス講談社 2006
- ぼくの伯父さんの休暇 ジャン=クロード・カリエール 著,ピエール・エテックス 絵,小柳帝 訳 中央公論新社 2008 (中公文庫)
- もうすぐ絶滅するという紙の書物について ウンベルト・エーコ, ジャン=クロード・カリエール 著,(工藤妙子) 訳 阪急コミュニケーションズ 2010
脚注
- ^ “ジャンクロード・カリエールさん死去 仏の作家・脚本家”. 朝日新聞. (2021年2月9日)2021年2月9日閲覧。