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ジクロロカルベン

ジクロロカルベン (dichlorocarbene) は、化学式がCCl2で表される反応中間体である。単離できず、専らクロロホルムから生じる有機化学合成における中間体である。折れ線型の反磁性分子で、速やかに他の結合に挿入される。

ジクロロカルベン
識別情報
CAS登録番号 1605-72-7 
PubChem 6432145
ChemSpider 4937404?
MeSH Dichlorocarbene
ChEBI
  • CHEBI:51370
バイルシュタイン 1616279
Gmelin参照 200357
特性
化学式 CCl2
モル質量 82.92 g mol−1
危険性
主な危険性 極めて反応性に富む
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

合成

ジクロロカルベンは一般的にクロロホルムカリウム tert-ブトキシドまたは水酸化ナトリウム水溶液との反応で生じる[1]相間移動触媒として、例えば臭化ベンジルトリエチルアンモニウムにより有機相中の水酸化物の移動が容易になる。

 

他の試薬と経路

ジクロロカルベンのその他の前駆体としてトリクロロ酢酸エチルがある。ナトリウムメトキシドで処理することによりCCl2が遊離する[2]。また、フェニル(トリクロロメチル)水銀が熱的に分解してもCCl2が遊離する[3]

 

暗所で安定であるジクロロジアジリンは光分解によりジクロロカルベンと窒素化学分解する[4]

 
ジクロロジアジリンからジクロロカルベン[5]

また、ジクロロカルベンは超音波化学によるマグネシウムを使った四塩化炭素の脱塩素でも得られる[6]。この方法は強塩基を用いないためエステルカルボニル化合物に耐性がある。

反応

ジクロロカルベンはアルケンと左右対称の[1+2]環付加を起こし、ジェミナルジクロロシクロプロパンを形成する。これを還元または加水分解させるとシクロプロパンになる。クロロホルムからのジクロロカルベンの合成法と実用性は1954年にウィリアム・デーリングにより報告された[7]

 
ジクロロカルベンの生成とシクロヘキセンとの反応

ライマー・チーマン反応によりジクロロカルベンとフェノールを反応させるとサリチルアルデヒドが得られる。

歴史

反応中間体としてのジクロロカルベンはアントン・ゴイダーにより1862年に初めて提案された。彼はクロロホルムをCCl2.HClとみていた[8]。ハインにより1950年に再調査された[9]

クロロカルベン

クロロカルベン(ClHC)はメチルリチウムジクロロメタンから合成することができ、スピロペンタジエンの合成に使われる。

出典

  1. ^ Organic Syntheses, Coll. Vol. 5, p.874 (1973); Vol. 41, p.76 (1961).[1][リンク切れ]
  2. ^ Organic Syntheses, , Coll. Vol. 6, p.731 (1988); Vol. 54, p.11 (1974).Online Article[リンク切れ]
  3. ^ Organic Syntheses, , Coll. Vol.5, p.969 (1973); Vol.46, p.98 (1966).[2][リンク切れ]
  4. ^ Dichlorodiazirine: A Nitrogenous Precursor for Dichlorocarbene Gaosheng Chu, Robert A. Moss, and Ronald R. Sauers J. Am. Chem. Soc., 127 (41), 14206 -14207, 2005 doi:10.1021/ja055656c
  5. ^ a) フェノールジシアンの反応でフェニルシアネートが生じる。b) ヒドロキシルアミンと反応しN-ヒドロキシ-O-フェニルイソ尿素となる。c) 塩化メタンスルホニルとの反応でメシラートとなりヒドロキシ基脱離基になる。d) 次亜塩素酸ナトリウムにより分子内閉環が起こりジアジリンとなる。e) テトラフルオロホウ酸ニトロニウムニトロ化。f) イオン液体中において塩化セシウム、塩化テトラブチルアンモニウムで求核置換反応
  6. ^ A Facile Procedure for the Generation of Dichlorocarbene from the Reaction of Carbon Tetrachloride and Magnesium using Ultrasonic Irradiation Haixia Lin, Mingfa Yang, Peigang Huang and Weiguo Cao Molecules 2003, 8, 608-613 Online Article
  7. ^ The Addition of Dichlorocarbene to Olefins W. von E. Doering and A. Kentaro Hoffmann J. Am. Chem. Soc.; 1954; 76(23) pp 6162 - 6165; doi:10.1021/ja01652a087
  8. ^ Ueber die Zersetzung des Chloroforms durch alkoholische Kalilösung Annalen der Chemie und Pharmacie Volume 123, Issue 1, Date: 1862, Pages: 121-122 A. Geuther doi:10.1002/jlac.18621230109
  9. ^ Carbon Dichloride as an Intermediate in the Basic Hydrolysis of Chloroform. A Mechanism for Substitution Reactions at a Saturated Carbon Atom Jack Hine J. Am. Chem. Soc., 1950, 72 (6), pp 2438–2445 doi:10.1021/ja01162a024

外部リンク

  • Addition of dichlorocarbene to 2-methyl-1-buten-3-yne, laboratory procedure

ジクロロカルベン
ジクロロカルベン, dichlorocarbene, 化学式がccl2で表される反応中間体である, 単離できず, 専らクロロホルムから生じる有機化学合成における中間体である, 折れ線型の反磁性分子で, 速やかに他の結合に挿入される, 優先iupac名dichlorocarbene系統名dichloromethylidene別称carbon, chloridecarbon, dichloride, carbonous, chloride, dichloro, methane, dichloromethylene識別情. ジクロロカルベン dichlorocarbene は 化学式がCCl2で表される反応中間体である 単離できず 専らクロロホルムから生じる有機化学合成における中間体である 折れ線型の反磁性分子で 速やかに他の結合に挿入される ジクロロカルベン優先IUPAC名Dichlorocarbene系統名Dichloromethylidene別称Carbon II chlorideCarbon dichloride Carbonous chloride Dichloro l2 methane Dichloromethylene識別情報CAS登録番号 1605 72 7 PubChem 6432145ChemSpider 4937404 MeSH DichlorocarbeneChEBI CHEBI 51370バイルシュタイン 1616279Gmelin参照 200357SMILES C Cl ClInChI InChI 1 CCl2 c2 1 3Key PFBUKDPBVNJDEW UHFFFAOYAT特性化学式 CCl2モル質量 82 92 g mol 1危険性主な危険性 極めて反応性に富む特記なき場合 データは常温 25 C 常圧 100 kPa におけるものである 目次 1 合成 1 1 他の試薬と経路 2 反応 3 歴史 4 クロロカルベン 5 出典 6 外部リンク合成 編集ジクロロカルベンは一般的にクロロホルムとカリウム tert ブトキシドまたは水酸化ナトリウム水溶液との反応で生じる 1 相間移動触媒として 例えば臭化ベンジルトリエチルアンモニウムにより有機相中の水酸化物の移動が容易になる HCCl 3 NaOH CCl 2 NaCl H 2 O displaystyle ce HCCl3 NaOH gt CCl2 NaCl H2O 他の試薬と経路 編集 ジクロロカルベンのその他の前駆体としてトリクロロ酢酸エチルがある ナトリウムメトキシドで処理することによりCCl2が遊離する 2 また フェニル トリクロロメチル 水銀が熱的に分解してもCCl2が遊離する 3 PhHgCCl 3 CCl 2 PhHgCl displaystyle ce PhHgCCl3 gt CCl2 PhHgCl 暗所で安定であるジクロロジアジリンは光分解によりジクロロカルベンと窒素に化学分解する 4 ジクロロジアジリンからジクロロカルベン 5 また ジクロロカルベンは超音波化学によるマグネシウムを使った四塩化炭素の脱塩素でも得られる 6 この方法は強塩基を用いないためエステルとカルボニル化合物に耐性がある 反応 編集ジクロロカルベンはアルケンと左右対称の 1 2 環付加を起こし ジェミナルジクロロシクロプロパンを形成する これを還元または加水分解させるとシクロプロパンになる クロロホルムからのジクロロカルベンの合成法と実用性は1954年にウィリアム デーリングにより報告された 7 ジクロロカルベンの生成とシクロヘキセンとの反応ライマー チーマン反応によりジクロロカルベンとフェノールを反応させるとサリチルアルデヒドが得られる 歴史 編集反応中間体としてのジクロロカルベンはアントン ゴイダーにより1862年に初めて提案された 彼はクロロホルムをCCl2 HClとみていた 8 ハインにより1950年に再調査された 9 クロロカルベン 編集クロロカルベン ClHC はメチルリチウムとジクロロメタンから合成することができ スピロペンタジエンの合成に使われる 出典 編集 Organic Syntheses Coll Vol 5 p 874 1973 Vol 41 p 76 1961 1 リンク切れ Organic Syntheses Coll Vol 6 p 731 1988 Vol 54 p 11 1974 Online Article リンク切れ Organic Syntheses Coll Vol 5 p 969 1973 Vol 46 p 98 1966 2 リンク切れ Dichlorodiazirine A Nitrogenous Precursor for Dichlorocarbene Gaosheng Chu Robert A Moss and Ronald R Sauers J Am Chem Soc 127 41 14206 14207 2005 doi 10 1021 ja055656c a フェノールとジシアンの反応でフェニルシアネートが生じる b ヒドロキシルアミンと反応しN ヒドロキシ O フェニルイソ尿素となる c 塩化メタンスルホニルとの反応でメシラートとなりヒドロキシ基が脱離基になる d 次亜塩素酸ナトリウムにより分子内閉環が起こりジアジリンとなる e テトラフルオロホウ酸ニトロニウムでニトロ化 f イオン液体中において塩化セシウム 塩化テトラブチルアンモニウムで求核置換反応 A Facile Procedure for the Generation of Dichlorocarbene from the Reaction of Carbon Tetrachloride and Magnesium using Ultrasonic Irradiation Haixia Lin Mingfa Yang Peigang Huang and Weiguo Cao Molecules 2003 8 608 613 Online Article The Addition of Dichlorocarbene to Olefins W von E Doering and A Kentaro Hoffmann J Am Chem Soc 1954 76 23 pp 6162 6165 doi 10 1021 ja01652a087 Ueber die Zersetzung des Chloroforms durch alkoholische Kalilosung Annalen der Chemie und Pharmacie Volume 123 Issue 1 Date 1862 Pages 121 122 A Geuther doi 10 1002 jlac 18621230109 Carbon Dichloride as an Intermediate in the Basic Hydrolysis of Chloroform A Mechanism for Substitution Reactions at a Saturated Carbon Atom Jack Hine J Am Chem Soc 1950 72 6 pp 2438 2445 doi 10 1021 ja01162a024外部リンク 編集Addition of dichlorocarbene to 2 methyl 1 buten 3 yne laboratory procedure https ja wikipedia org w index php title ジクロロカルベン amp oldid 77475385 から取得, ウィキペディア、ウィキ、本、library、

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