コンドル航空 (コンドルこうくう、ドイツ語: Condor Flugdienst GmbH) は、ドイツ・フランクフルトに本社を置く航空会社である。世界的な旅行代理店トーマス・クック・グループの子会社であるため、特に観光路線に強く、観光シーズンに季節運航便を多く増便する。通称はコンドル。
概要
地中海沿岸地域やアフリカを始めとして、アジア、北米、南米、カリブ海地域の観光地やリゾート地に就航している。本拠地とする空港はフランクフルト空港[2]で、これに次ぐ拠点空港は、ミュンヘン空港、デュッセルドルフ空港、シュトゥットガルト空港、ベルリン・シェーネフェルト空港である。長距離便の多くはフランクフルト空港とミュンヘン空港を発着する。
コンドルは、保有機材の数と利用者数でドイツ国内3位の航空会社となっている。フランクフルト空港近くの"Gateway Gardens"に本社があり、これに次ぐ支店をシェーネフェルトに構える。現在はイギリスのトーマス・クック・グループの子会社となっているが、以前はドイツのルフトハンザドイツ航空の子会社だった。その名残で、現在も、コンドルのマイレージプログラムはルフトハンザのMiles & Moreであり、フランクフルト空港のコンドルのラウンジは、ルフトハンザのビジネスクラスラウンジとなっている。
歴史
会社の設立
会社は1955年12月21日に西ドイツの大手海運業者だった(ノルトドイッチャー・ロイド)と(ハンブルク・アメリカ・ライン)が中心となってドイツ連邦鉄道とルフトハンザからも出資を得てドイツ航空(Deutsche Flugdienst GmbH)として設立された。最初に保有していた機材はビッカース ヴァイキングで、最初の定期便はイスラエル行きの便であった。初期からマヨルカ島やテネリフェ島へも就航していた。1959年にはルフトハンザの出資額が95.5%となり、ルフトハンザにとっては戦後初の子会社となった。
コンドルへの改名と規模の拡大
1961年に(アウグスト・エトカー・グループ)傘下の(コンドル空運)(Condor-Luftreederei・1957年設立)を吸収合併し、現在のコンドル航空(Condor Flugdienst GmbH)に改めた。1966年にはタイ、セイロン(現スリランカ)、ケニア、ドミニカ共和国などの長距離路線を開始した。
1971年、旅客機としては当時最大であったボーイング747型機の保有を開始した。その他にも、ボーイング707型機やボーイング727型機を保有していた。1989年には、当時のトルコ航空との合弁航空会社としてサンエクスプレスを設立。ドイツ・トルコ間のレジャー路線を支えた(なお、サンエクスプレスにおけるコンドルの持分は、2007年にすべてルフトハンザに移されている)。
1990年代に入ると、ボーイング757型機やボーイング767型機を保有。1991年には、レジャー航空会社としては初となる上級クラス座席をボーイング767型機に導入した (コンフォートクラス。現在はビジネスクラスに改称)。
トーマス・クック・グループ傘下へ
2000年以降、ルフトハンザが有していたコンドルへの株主持分は、徐々にトーマス・クック・グループへ移譲された[3]。コンドルがトーマス・クック・グループの一員となっていく過程は、2003年3月に、コンドルがThomas Cook powered by Condorへブランドを刷新したことから顕在化した。航空機の塗装は刷新され、トーマス・クックのロゴが尾翼に描かれ、"Condor"のフォントはトーマス・クックのものが用いられるようになった。2004年1月23日、コンドルは(トーマス・クック AG)の一部となり、ブランド名は再びCondorとなった[3]。2006年12月の時点で、ルフトハンザの持分は24.9%となり、ルフトハンザの影響力は低下した。
2007年9月、エア・ベルリンとの間で株式交換取引を交わす計画を発表したが、翌年9月に断念した[3][4]。
2010年12月、トーマス・クック・グループは、短距離路線用の機材としてエアバスA320を購入することを決定[5]。2012年9月17日には、メキシコの格安航空会社、ボラリスとの間でコードシェア提携を交わした[6]。また、2013年3月12日には、カナダの航空会社、ウエストジェット航空との間でインターライン提携を締結。これにより、コンドルの利用客はカナダへより行きやすくなるとともに、両社にとってもさらなる路線拡大に弾みがついた[7]。
グループ内の統一
2013年2月4日、トーマス・クック・グループは、航空事業の進展を図るため、同年3月より、トーマス・クック航空、(トーマス・クック航空ベルギー)、コンドルのグループ3社を、同一セグメントにおいて運営することを発表した[8]。これに伴って、同年10月1日よりブランドロゴを統一。また、尾翼にハートのマークが描かれ、グレー、白、黄色を基調とする新たな塗装が採用された。ハートのマークはサニーハート (Sunny Heart) と呼ばれ、グループ内統一のシンボルとされている[9]。
2014年7月まで、コンドルは保有するボーイング767-300型機材のリニューアルを進めてきた[10][11]。エコノミークラスとプレミアムエコノミークラスの座席をZIM FLUGSITZ GmbH製のものに新調するとともに、プレミアムエコノミークラスの快適性をさらに向上させた[12]。また、コンフォートクラスに代わって新たにビジネスクラスも設置した[13]。
ニキ航空の買収
2018年1月、トーマス・クック・グループがニキ・ラウダと共に、前年に経営が破綻し運行を停止していたニキ航空を買収。ニキ航空はラウダが所有する別のビジネスジェット運行会社である「Laudamotion」の子会社となったが、実際の運行業務はコンドルが担うことになり、同年2月に運行委託契約が結ばれた[14]。しかし、同年3月にラウダがLaudamotionの株式をライアンエアーに売却したため、コンドルへの運行委託は同年4月で終了した。
トーマス・クック・グループの破綻後
2019年9月23日、親会社のトーマス・クックグループが経営破綻し破産手続きに入ったが、コンドル自体はドイツの支払不能法の一部である保護手続きを活用しトーマス・クック・グループより独立。EUの承認の元ドイツ政府から4億2000万ドルの貸付を受け運航を継続しており、かつての親会社であるルフトハンザと共に新たな買収先を模索している[15]。
就航都市
ドイツの主要都市を拠点として、ヨーロッパのみならず、南北アメリカやアジアにも就航している。観光シーズンになると、カナダやプーケット(タイ)などの長距離線の便数が増す。以下は、定期便の便数の多い主要国一覧(すべての就航地はCondor公式サイトまたはen:Condor Flugdienst destinations参照)[16]。
補足
1990年代には、当時の親会社のルフトハンザが政治的理由で乗り入れできなかった中華民国(台湾)に、同社に代わって乗り入れていた。
機材
現在の保有機材
2023年現在、コンドル航空が保有している機材は以下のとおりである[17]。
機種 | 保有数 | 発注数 | 座席数 | 備考 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
B | P | Y | 計 | ||||
エアバスA320-200 | 12 | 24 | 156 | 180 | 1機:復刻塗装機 "Hans" (D-AICA)[18][19] 1機:特別塗装機 "Raffael" (D-AICC) 1機:トーマス・クック航空へリース 1機:Avion Expressからリース | ||
エアバスA321-200 | 11 | 24 | 186 | 210 | |||
196 | 220 | ||||||
エアバスA330-200 | 4 | 22 | - | 234 | 256 | ||
エアバスA330-900 | 3 | 10 | 30 | - | 280 | 310 | |
ボーイング757-300 | 9 | 26 | 249 | 275 | ローンチカスタマー 1機:50周年特別塗装機 "Willi" (D-ABON)[20] | ||
36 | 239 | ||||||
ボーイング767-300ER | 9 | 18 | 35 | 203 | 256 | 1機:復刻塗装機 "Achim" (D-ABUM)[21] 2機:特別塗装機 "Janosch" (D-ABUE), "Ja zu FRA!" (D-ABUZ)[22] | |
204 | 257 | ||||||
205 | 258 | ||||||
206 | 259 | ||||||
30 | 180 | 245 | |||||
計 | 48 | 10 |
過去の保有機材
- エアバスA300B4
- エアバスA310-200・300
- エアバスA319-100
- エアバスA330-300
- ボーイング727-100・200
- ボーイング737-100・200
- ボーイング737-300
- ボーイング737-700
- ボーイング747-200
- ボーイング747-400
- ボーイング757-300
- ダグラス DC-8
- マクドネル・ダグラス DC-10-30
特別塗装機
2015年9月現在、コンドルは上表で示した6機の特別塗装機を保有している。なお、2機の復刻塗装機のうち、「ハンス」(Hans, D-AICA) は1956年の会社設立当時、「アヒム」(Achim, D-ABUM) は1970年代の機材の塗装を再現したものである[23]。
ギャラリー
エアバスA300B4
エアバスA310-200
エアバスA320
エアバスA321-200
エアバスA330-200
エアバスA330-900
ボーイング727-100
ボーイング737-200
ボーイング737-300
ボーイング747-200B
ボーイング747-400
ボーイング757-200
ボーイング757-300
ボーイング767-300ER
ダグラスDC-8-73CF
マクドネル・ダグラスDC-10-30
サービス
客席
コンドルは、ボーイング767型機はビジネス、プレミアムエコノミー、エコノミーの3クラス、それ以外の機材ではプレミアムエコノミーとエコノミーの2クラスを提供している。
ビジネスクラス
ボーイング767型機の全面刷新に伴い、上級クラスの名称は2014年に「コンフォートクラス」から「ビジネスクラス」に変更された[13]。ビジネスクラスは、すべてのボーイング767型機に導入されている。
ビジネスクラスの座席は、170度の電動リクライニングが可能であるほか[24]、シートピッチは60-インチ (150 cm)、シート幅は19-インチ (48 cm)、個人モニタは15インチとなっており、いわゆるフルサービスキャリアと比べても遜色のない仕様となっている[25]。
プレミアムエコノミークラス
プレミアムエコノミークラスの座席は2種類[26]。長距離便は、通常のエコノミークラスにヘッドレストを加えてシートピッチを広くした座席であり、すべてのボーイング767型機に導入されている[27]。短距離便は、通常のエコノミークラスの座席のうち、通路側の座席と窓側の座席のみを使用できるようにしたものである。
エコノミークラス
全てのエコノミークラスの座席は、シートピッチは30-インチ (76 cm)、シート幅は17-インチ (43 cm) となっている[28]。通路にも壁にも面していない座席は、2-インチ (5.1 cm) シート幅が広く取られている[29]。
機内エンターテインメント
個人用モニターは、全クラスの座席に設置されている。およそ30本の映画、50本のテレビ番組、24本のラジオ番組と100以上の楽曲CDを、オンデマンド形式で視聴可能である。ビジネスクラスおよびプレミアムエコノミークラスに搭乗している乗客はそれらすべてを制限なく視聴できる。他方、エコノミークラスに搭乗している乗客は、映画、テレビ番組、音楽CDの、それぞれ1つに限って視聴可能となっている[25]。
その他
- 機内安全ビデオで独特な演出がなされている事が多い。たとえば、チャールズ・チャップリン、エルヴィス・プレスリー、マリリン・モンローに扮した人物が出演するものや、音楽に乗りながら説明をするものがある[30]。
関連項目
- トーマス・クック・グループ
- ルフトハンザドイツ航空
- 大韓航空機撃墜事件 - 1972年にコンドル航空が導入した機体記号D-ABYH機(ボーイング747-200型)が、1979年に大韓航空に売却されHL7442の機体記号となり被害に遭った。
- エアーニッポン - 同じ理由で親会社の全日本空輸に代わって台湾線を運航していた。
脚注
- ^ “IATA - Airline and Airport Code Search”. iata.org. 2015年4月13日閲覧。
- ^ “Directory: World Airlines”. Flight International: p. 68. (2007年4月3日)
- ^ a b c “AeroTransport Data Bank”. 2015年7月10日閲覧。
- ^ Flightglobal: Air Berlin consolidates market position with Condor takeover. Published online on 24 September 2007.
- ^ Thomas Cook Group Preliminary Results 2010
- ^ “Condor und mexikanische Volaris schließen Partnerschaft”. (2012年9月17日)2012年11月12日閲覧。
- ^ “Condor and WestJet agree on interline partnership” (2013年3月12日). 2013年3月12日閲覧。
- ^ “Thomas Cook shakes up airline business.”. ロイター. (2013年2月5日)
- ^ “740KVOR The Thomas Cook Group Unites as One Team With New 'Sunny Heart' Brand”. 2013年10月1日閲覧。
- ^ “New Cabins for Condor's Entire Long-Haul Fleet”. Marketwire. 2015年7月10日閲覧。
- ^ - New Cabins for Condor's Entire Long-Haul Fleet
- ^ “Condor Premium Economy Class; Condor Air Lines”. www.condor.com. 2013年10月15日閲覧。
- ^ a b “Flight Review: Checking Out Condor Airlines' Business Class to Frankfurt - AirlineReporter.com”. AirlineReporter.com. 2015年7月10日閲覧。
- ^ “Laudamotion will take off with Condor and Eurowings”. fvw.com (2018年2月21日). 2018年3月21日閲覧。
- ^ “英トーマス・クック破綻、その後の顛末を追ってみた、ブランド買収から航空事業・店舗・ホテルの行方まで【外電】”. トラベルボイス. 2020年2月25日閲覧。
- ^ “Favorite flights”. Condor. 2015年9月3日閲覧。
- ^ “Our Fleet - Condor”. www.condor.com. 2021年8月16日閲覧。
- ^ “Photos: Airbus A320-212 Aircraft Pictures - Airliners.net”. 2015年7月10日閲覧。
- ^ Condor Airbus gets nostalgic makeover (PDF; 26 kB)
- ^ “Photos: Boeing 757-330 Aircraft Pictures - Airliners.net”. 2015年7月10日閲覧。
- ^ “Photos: Boeing 767-31B/ER Aircraft Pictures - Airliners.net”. 2015年7月10日閲覧。
- ^ “Condor Celebrates Special Janosch Themed Livery”. AirlineReporter.com. 2015年7月10日閲覧。
- ^ “Sonderlackierungen”. Condor. 2015年9月13日閲覧。
- ^ “Business Class”. Condor. 2015年9月13日閲覧。
- ^ a b “SeatGuru Seat Map Condor Boeing 767-300ER (763) V2”. 2015年7月10日閲覧。
- ^ “Premium Economy - a class of its own”. Condor. 2015年9月9日閲覧。
- ^ “Condor Planes, Fleet and Seat Maps”. 2015年7月10日閲覧。
- ^ “SeatGuru Seat Map Condor Boeing 767-300ER (763) V1”. 2015年7月10日閲覧。
- ^ “Condor Gives Wider Middle Seats”. AirlineReporter.com. 2015年7月10日閲覧。
- ^ “Condor safety instructions feature Paris Hilton, Elvis and Michael Schumacher”. Condor (2011年4月4日). 2011年11月9日閲覧。
外部リンク
- 公式ウェブサイト (英語)(ドイツ語)(スペイン語)(フランス語)(イタリア語)(ポーランド語)(ポルトガル語)(デンマーク語)(オランダ語)
- Condor Flugdienst GmbH - YouTubeチャンネル (ドイツ語)