イトヨリダイ(糸撚鯛、または、糸縒鯛。学名:Nemipterus virgatus)は、硬骨魚綱スズキ目イトヨリダイ科に属する海水魚である。
名称
生鮮魚介類として流通する場合にはイトヨリの名称も用いられる[1]。また、地方名としてイトヒキと呼ばれる場合もあり、沖縄県ではイジュキンなどと呼ばれる。
分布
琉球列島を除く本州中部以南の西日本、南日本、東シナ海、台湾、南シナ海の水深40 mから100 m程度の泥の有る海底に生息する。
形態
体長は40 cm程度まで成長し、身体は細長く、やや側扁する。尾びれは深く二叉し、上端部は糸状に伸びる。体色はマダイよりも淡く、ピンク色に近い。体側に黄色い縦縞が6本ある。
ヒトとの関わり
日本
日本ではうま味が強い白身魚で、美味であるため、経済的価値が高い魚として漁獲され、取引される。中でも、近海で漁獲された大型の物は、高値で取引され、特に関西で珍重される。しかし、日本で市販されている物には輸入された物も多く、その場合は鮮度が落ちるので注意が必要である。日本での旬は、秋から冬にかけてとされる[2]。
身が柔らかく崩れ易いため、煮付け料理には向かず、蒸し魚や、塩焼きにする場合が多い。ただし、沖縄県では食塩で味付けして煮る、マース煮にもされる。身が柔らかいため、病人用の食事として供される場合もある。なお、鮮度が高ければ、刺身にして食べる例も見られる。
台湾
台湾では「金線鰱」(ジンシエンリエン)と称し、中級の魚として食べられている。油で煎り焼きにする事が最も多いものの、台湾では「話梅」(干し梅)の風味を付けた汁をかけて食べたりもする。また、蒸し魚、塩焼きなどにする場合もある。さらに、魚肉練り製品の材料に使われる場合もある。
中華人民共和国
香港や広東省では「紅衫」「広東語、ホンサーム)と称し、中級の魚として食べられている。油で煎り焼きにする事が最も多いものの、例えば、香港では落花生油で焼いて、豆豉で味を付けるなど、地域によって味付けに違いが見られる。また、蒸し魚、塩焼きなどにする場合もある。
近縁種
- (ソコイトヨリ) - 腹縁が黄色く、体側の黄色の線は3本である。食味はイトヨリダイより若干大味とされる。
- (モモイトヨリ) - 沖縄県周辺に生息。全体に薄い桃色で、体側に線が無く、尾びれ上端が糸状には伸びていない。