アーキテクト(architect)は、建設する者、といったような意味の語であり、アーキテクチャという語と密接な関係にある。また、大工のような現場の担当者よりも、設計側のほうを指して使われることが多い。具体的な建造物の他、より抽象的な情報アーキテクチャのような概念に対しても使われることもある。
概要
"arkhi"は英語で chief (主任)(接頭辞archi-も参照)、"tekton"は英語で builder (建築者)の意であることから、「主任建築者」というのが本来の意味である。現在「Architect」は、アメリカ、イギリスを初めとしたいくつかの国で建築設計者の職名として法定があるため、その資格者以外に使うのは避けられ、別の語が使われる。日本では諸外国とは違い「建築士」という名称が建築の意匠設計のみならず、エンジニアリング分野で土木工学を含む構造設計や建築設備設計者ら工学設計にも従事し、また施工監理を実践する「技術者」も含む資格の名称として法定されている。このため別の語として「建築家」を使うことがある。(構造デザイン#概要)も参照。
「builder」は工務店等の建設業者に対して使われる。「master builder」の場合は大工の棟梁など建築現場での責任者を意味する。
使用例
- 建築家
- 日本語の建築家の定義は曖昧であり日本の建築家でも建築士資格を持たない人物もいるが、そのような場合も含めてアーキテクトが使われる。建築家の職分の中でもマスター・アーキテクト、エンジニア・アーキテクト(構造技術者)、ランドスケープ・アーキテクト(造園家)のような用例は、そのままカタカナ表記で使用される。なお、これらの用例の英語表記は、アメリカ、イギリス等でも直接使用が制限されているわけではないため資格者以外が名乗ることもできるが、資格者である Architect と誤認されるような使い方をした場合には違法となる。
- 建築士
- 日本では Architect に対応する語として建築士をあてていたが、1950年(昭和25年)に資格制度として建築士法が制定された。法務省作成の日本法令外国語訳データベースシステムでは、(一級建築士)の英訳として「first class architect」「class-1 architect」の2種が使われている。
- 都市計画家
- 都市計画に従事しその作業を行う専門家は英語圏では Planner と呼ばれるが、建築家が都市計画を行うことも多いことから、都市計画家をアーキテクトと呼ぶことがある。都市計画家として著名なウィリアム・ホルフォードの墓に「Architect」と刻まれているのはこのためであろう。
- 設計者
- 建築における設計者は、建築士でなくともアーキテクトと言うことがある。更に、本来の意味から離れて他の分野における設計者もアーキテクトと言う場合がある。
- コンピュータ関係
- コンピュータ関係では、1960年代からコンピュータ・アーキテクチャという語があり、近年ではソフトウェアアーキテクチャや、より広くシステムアーキテクチャや情報アーキテクチャといった語もあり、そういったものを設計する者といった意味である。IEEEの定義では、アーキテクトとは、システムアーキテクチャを統括する個人、チーム、あるいは組織を指す。情報処理技術者試験では、その一区分としてシステムアーキテクト試験が行われている。
- その他
- 映画「マトリックス」に出てくる、マトリックスを創造した人工知能のこと。
- アーキテクト (企業) - 東京都にある市場調査、スポーツマネジメント、テレビ番組制作・観覧業務などを行う企業。
脚注
- ^ 図解入門よくわかる最新船舶の基本と仕組み[第2版](著者: 川崎豊彦)
参考文献
- Douglas Harper『Online Etymology Dictionary』(etymonline.com)
- 法務省『日本法令外国語訳データベースシステム』(www.japaneselawtranslation.go.jp)
- Architects Act(アメリカ)
- Architects Act(イギリス)
- Building Control Act(アイルランド)
- Architects Act(カナダ)
- Architects Act(インド)
- Architects Registration Act(スリランカ)