アンチ・ダンピング関税措置(アンチ・ダンピングかんぜいそち)とは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング(不当廉売)輸出)が、輸入国の国内産業に被害を与えている場合に、ダンピング価格を正常な価格に是正する目的で、価格差相当額以下で賦課される特別な関税措置。WTO協定(GATT・AD協定)において認められているもので、わが国では、関税定率法(第8条)等により調査手続き等が定められている。
経済産業省 特殊関税等調査室HP (初めての方へ)
対象
- AD(アンチダンピング)措置とは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が、輸入国(日本)の国内産業に被害を与えている場合に、その価格差を相殺する関税を賦課できる措置。この措置は、WTO協定(GATT・AD協定)において認められている。
- AD措置は、原則、国内生産者(申請企業)からの申請(課税の求め)に対し、経済産業省・財務省等からなる調査チーム(調査当局)による調査(原則1年、最大18カ月)を行い、要件を満たしていることが認められた場合に発動される。課税期間は原則として5年以内だが、期限内に正当な見直しが行われた場合には延長される。
AD措置の発動3要件
AD措置の発動要件は
- ダンピング輸出
- 国内産業への損害
- 両者(上記1.及び2.)の因果関係
の3要件が満たされていることが認められた場合に発動される。
経済産業省 特殊関税等調査室HP (初めての方へ)
発動要件1.ダンピングの事実
ダンピングマージン(DM)率が2%超[1]の時ダンピングの事実が認められる。
ダンピングマージン率=(正常価格 - 輸出価格)/ 輸出価格
(計算例)
正常価格 :120円/kg
輸出価格:100円/kg
DM率 (120円/kg - 100円/kg) / 100円/kg = 20%
出典:経済産業省 アンチ・ダンピング(AD)措置の効果と活用(実践編P21〜)
※対中アンチ・ダンピング課税における第三国価格の使用
中国からの輸出に対するダンピング・マージン(正常価格と輸出価格の差額)の認定においては、 2001年のWTO加盟時の取決め(中国加盟議定書)に基づき、正常価格として、中国の国内販売価格以外の代替価格 (第三国の国内販売価格等)を用いて、代替価格と中国からの輸出価格を比較することが可能となっている。
日本における取り扱い
我が国では、「不当廉売関税に関する政令」(第2条第3項)において、中国に対するアンチダンピング課税調査に第三国価格を使用できる旨規定している。
出典:経済産業省 2019年版不公正貿易報告書
第6章アンチ・ダンピング措置
発動要件2.国内産業への損害
以下の3つについて検討
- 数量効果
- 価格効果
- 損害15指標
出典:経済産業省 アンチ・ダンピング(AD)措置の効果と活用(実践編P21〜)
発動要件3.因果関係
国内産業の損害が①ダンピング輸入の影響であること②ダンピング輸入以外の要因でない事実
出典:経済産業省 アンチ・ダンピング(AD)措置の効果と活用(実践編P21〜)
調査申請要件
申請時に必要となる要件
申請者の生産高/国内総生産高 >= 25% ※ここでは、「輸入生産者」等の生産高は除かれる。(「調査開始時に必要となる要件」についても同様。) *業界団体で申請を行う場合は、団体の構成員の2以上の者が調査対象製品を生産していることが必要。
調査開始時に必要となる要件
申請を支持する国内生産者の生産高 > 申請に反対する国内生産者の生産高(※) ※申請に支持も反対も表明しない者は、この要件の算定時に考慮されない。 出典:経済産業省 アンチ・ダンピング(AD)措置の効果と活用(実践編P24)
日本の発動事例
出典 経済産業省 特殊関税等調査室 (過去事例)[2]。
品名 | 国名(被発動国) | 課税状況 |
---|---|---|
炭素鋼製突合せ溶接式継手 | 大韓民国他 | 課税中 |
高重合度ポリエチレンテレフタレート | 中華人民共和国 | 課税中 |
水酸化カリウム | 大韓民国他 | 課税中 |
トルエンジイソシアナート | 中華人民共和国 | 課税中 |
電解二酸化マンガン | 中華人民共和国他 | 課税中(一部課税終了) |
カットシート紙 | インドネシア共和国 | - |
ポリエステル短繊維 | 大韓民国他 | 課税終了 |
日本の調査当局
米国の調査当局
- 米国商務省 ENFORCEMENT AND COMPLIANCE
- United States International Trade Commission