アコウ(榕、赤榕、赤秀、雀榕、学名:Ficus superba var. japonica)は、クワ科の半常緑高木。F. superba の変種 var. japonica とされているが[4][5][6]、Ficus subpisocarpa とする説もある[2]。
分布と生育環境
日本では、紀伊半島(和歌山県南部)および山口県、四国南部、九州、南西諸島などの温暖な地方に分布する[7]。日本国外ではアジア南東部[7]の台湾や中国南部、東南アジアなどに分布している。
特徴
常緑広葉樹の高木で[7]、樹高は約10 - 20m。樹皮はきめ細かい。幹は分岐が多く、枝や幹から多数の気根を垂らし、岩や露頭などに張り付く[7]。岩の隙間にも根を下ろし、多数伸ばした気根が樹木を支えるために役立っている[7]。新芽は成長につれ色が赤などに変化し美しい。葉は互生し、やや細長い楕円形でなめらかでつやはあまりなく、やや大ぶりで約10 - 15センチメートル (cm) ほどである。一年のうち、3 - 4月ごろに新葉を出す前に一度落葉する[7]。ただし、その時期は一定ではなく、同じ個体でも枝ごとに時期が異なる場合もある。
5月頃、イチジクに似た形状の小型の隠頭花序を、幹や枝から直接出た短い柄に付ける(幹生花)。果実は熟すと食用になる。
アコウの種子は鳥類によって散布されるが、その種子がアカギやヤシなどの樹木の上に運ばれ発芽して着生し、成長すると気根で親樹を覆い尽くし、枯らしてしまうこともある。そのため絞め殺しの木とも呼ばれる。これは樹高の高い熱帯雨林などで素早く光の当たる環境(樹冠)を獲得するための特性である。琉球諸島では、他の植物が生育しにくい石灰岩地の岩場や露頭に、気根を利用して着生し生育している[8]。
利用
防風樹、防潮樹、街路樹として利用される。沖縄県や鹿児島県奄美群島では、防風のために人家のまわりに植えて屋敷林にも利用される[7]。日本では国の天然記念物に指定されている巨樹、古木も多い。また、ガジュマルに比べると耐寒性が高いという特性を活かし、観葉植物としても用いられる。
保護上の位置づけ
日本
- 国の天然記念物 - 本州及び九州の巨樹、分布北限地及びその付近が指定されている。
- 地方自治体指定の天然記念物
- 室戸のアコウ(高知県室戸市) - 室戸市の天然記念物
- 垂水のアコウ(鹿児島県垂水市)-海沿いの宮脇公園に、樹齢100年のアコウ並木がある。
脚注
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ficus superba (Miq.) Miq. var. japonica Miq. アコウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月10日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ficus subpisocarpa Gagnep. アコウ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月10日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ficus wightiana auct. non Wall. ex Maxim. アコウ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月10日閲覧。
- ^ 佐竹義輔ら編集 『日本の野生植物 木本 I』 平凡社、1989、90頁、(ISBN 978-4-582-53504-4)。
- ^ 初島住彦・天野鉄夫 『増補訂正 琉球植物目録』 沖縄生物学会、1994年、36頁、(ISBN 4-900804-02-9)。
- ^ 島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧【改訂版】』 九州大学出版会、1997年、128頁、(ISBN 4-87378-522-7)。
- ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 236.
- ^ 土屋誠・宮城康一編『南の島の自然観察』東海大学出版会、1991年、100-101頁、(ISBN 4-486-01159-7)。
参考文献
- 土屋誠・宮城康一編 『南の島の自然観察』 東海大学出版会、1991年、100-101頁、(ISBN 4-486-01159-7)。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、236頁。ISBN (4-522-21557-6)。
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関連項目
外部リンク
アコウ:植物園にようこそ