ならずもの（Das Lumpengesindel、KHM10）はグリム童話のひとつ。
「ならずもの」の押絵
オンドリとメンドリの夫婦が、山でたらふくクルミを食べた後、歩いて帰るのが億劫になった。そこで二羽はクルミのカラで引き車をこしらえた。しかし、どちらが車を引いていくかで言い争いを始める。そこへカモがやってきた。
カモは、ニワトリ夫婦が無断でクルミを食べたことに憤慨し、戦いになるが、負けて車を引かされる。道すがら留め針と縫い針が車に乗せてほしいと頼んできた。ニワトリ夫婦は承諾した。
夜遅く、一行は宿屋にたどり着いた。宿の主人は、いかにもうさんくさい一行を見て宿泊をしぶるが、メンドリに道中で産んだタマゴとこのカモをあげるからと説得され、泊まらせる。一行は豪勢に飲み食いし、寝床に入った。
翌朝、オンドリとメンドリは早起きして、くちばしでタマゴに穴を開けて中身を飲み、カラをかまどの火へ放り投げた。そしてまだ寝ている留め針と縫い針を、椅子のクッションと洗面所の手ぬぐいに刺し、逃げ出した。カモも小川に飛び込んで逃亡する。
しばらくして起床した宿屋の主人が顔を洗って、手ぬぐいで顔をふくと、刺してあった留め針が顔に刺さる。狼狽した主人が一服しようと、パイプの火をつけにかまどに近づくと、タマゴの殻がはじけて主人の目に当たる。椅子に腰を下ろすと、縫い針が主人のお尻に刺さった。ゆうべ来たあの一行が怪しいと探し回るが、すでに影も形もなかった。
宿屋の主人は「さんざん飲み食いした挙句、金も払わず、いたずらまで仕掛けていくようなならずものは、二度と泊めまい」と心に誓うのだった。