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Υ

Υ, υ(ウプシロン、ユプシロン、イプシロン、古代ギリシア語: ユーギリシア語: ύψιλον イプシロン英語: upsilon ユプスィロン)はギリシア文字の第20番目の文字。ギリシア数字の数価は400。

「イプシロン」は現代ギリシア語ではこの文字を言うが、日本ではε(エプシロン)のことを指すことがある。

ラテン文字U, V, W, Y, キリル文字У, Ү, Ў はこの文字に由来する。ラテン文字のYは本来ギリシア語からの借用語を表記するために導入されたものであることから、近代諸言語でもギリシア語名に由来する名称、または「ギリシアのイ」を意味する名称で呼ぶ言語も多い。

音声

もっとも古い時期には円唇後舌狭母音/u, uː/を表していたが、アッティカイオニア方言では早くから円唇前舌狭母音/y, yː/に変化した[1]。二重母音αυ, ευはそれぞれ/au, eu/と発音されたようである[2]

ουはもともと二重母音/ou/を表していたが、後に長く狭い/oː/と同音になり、両方をこのつづりで書くようになった。さらに狭母音化して/uː/の音を持つようになったが、古典期の音が/oː//uː/のどちらだったかは明らかでない[3]

現代ギリシア語では単独、または υι で /i/, αυ, ευ, ηυ は後続の音が無声音のときに /af/, /ef/, /if/, 母音を含む有声音のときに /av/, /ev/, /iv/。ου は /u/ をあらわす。

起源

このυ Υは、フェニキア文字で半母音/w/を表した 𐤅  (ワウ)に由来する。なお古いギリシア文字で/w/の音を表した「Ϝ」(ディガンマ)も同じ文字に由来する(フェニキア文字の異体字)。

ギリシア文字アルファベット表では、

  • Ϝがフェニキア文字アルファベット表と同じ位置(εの次)に置かれていたのに対し、
  • υ Υはフェニキア文字アルファベット表の最後の文字にあたるτ(タウ)の後ろへ付け加えられた[4]

極めて古いギリシア文字を含むほぼすべての出土資料にはこの文字が含まれている。

  • 僅かな例外としてエジプトファイユームで発見されたとされる4枚の金属板に刻まれたギリシア文字アルファベット表はτで終わっており、時代不明ながらも母音字υがまだ確立しないギリシア文字のもっとも古い段階を示すものと考えられている[5]
  • 1つのフェニキア文字から形の異なる2つのギリシア文字が生まれた経緯については充分わかっていない。ナヴェはまず/w/の字として伝えられて特有の「Ϝ」の形になった後、ふたたびフェニキア文字が伝えられたという説を述べているが[6]、実体のない議論として批判されている[7]

古代の文字名称は単に母音を伸ばした(ユー)だった。古典ギリシア語では語頭のυには必ず有気記号がつくため、実際のアッティカ名は(ヒュー)だったかもしれない[8]。後に二重母音οιが同音の/y/に変化し、ビザンチン時代の文法学者が両者の区別のためυをユプシロン(ὒ ψιλόν、単なるユー)と呼んだのが現代の名称の由来である[9]

合字

 
床屋(κουρεῖον、現代の標準であるディモティキではκουρείο)の看板

正式の書き方ではないが、ου合字で書かれることがある。占星術での牡牛座の記号(♉)に似ている。

Unicodeにはouの合字(大文字 U+0222 Ȣ、小文字 U+0223 ȣ)が存在するが、ギリシア文字でなくラテン文字の一種とされている。

記号としての用法

大文字の「Υ」は、素粒子物理学ボトムクォークとその反クォークからなるウプシロン中間子 ( ) を表す。ただし、ラテン文字のYとの混同を避けるために、それと解るフォントや表記(「 ϒ 」など)を使用する。

符号位置

大文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 小文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考
Υ U+03A5 1-6-20 Υ
Υ
Υ
υ U+03C5 1-6-52 υ
υ
υ
Ύ U+038E - Ύ
Ύ
ύ U+03CD - ύ
ύ
Ϋ U+03AB - Ϋ
Ϋ
ϋ U+03CB - ϋ
ϋ
記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
ΰ U+03B0 - ΰ
ΰ
ϒ U+03D2 - ϒ
ϒ
ϒ
GREEK UPSILON WITH HOOK SYMBOL

脚注

  1. ^ Allen (1987) pp.65-69
  2. ^ Allen (1987) pp.79-80
  3. ^ Allen (1987) pp.75-78
  4. ^ Allen (1987) p.47
  5. ^ Woodard (2004) pp.656-657
  6. ^ Naveh (1987) p.184
  7. ^ Swiggers (1996) p.268
  8. ^ Allen (1987) p.172
  9. ^ Allen (1987) pp.172-173

参考文献

  • W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558 
  • Joseph Naveh (1987) [1982]. Early History of the Alphabet (2nd ed.). Hebrew University. ISBN 9652234362 
  • Pierre Swiggers (1996). “Transmission of the Phoenician Script to the West”. In Peter T. Daniels; William Bright. The World's Writing Systems. Oxford University Press. pp. 261-270. ISBN 0195079930 
  • Roger D. Woodard (2004). “Greek Dialects”. The Cambridge Encyclopedia of the World's Ancient Languages. Cambridge University Press. pp. 650-672. ISBN 9780521562560 

Υ
この項目では, ギリシャ文字のについて説明しています, ラテン文字については, をご覧ください, ウプシロン, ユプシロン, イプシロン, 古代ギリシア語, ユー, ギリシア語, ύψιλον, イプシロン, 英語, upsilon, ユプスィロン, はギリシア文字の第20番目の文字, ギリシア数字の数価は400, ギリシア文字Αα, アルファ, Νν, ニューΒβ, ベータ, Ξξ, クサイΓγ, ガンマ, Οο, オミクロンΔδ, デルタ, Ππ, パイΕε, エプシロン, Ρρ, ローΖζ, ゼータ, Σσς. この項目では ギリシャ文字のYについて説明しています ラテン文字については Y をご覧ください Y y ウプシロン ユプシロン イプシロン 古代ギリシア語 ὖ ユー ギリシア語 ypsilon イプシロン 英語 upsilon ユプスィロン はギリシア文字の第20番目の文字 ギリシア数字の数価は400 ギリシア文字Aa アルファ Nn ニューBb ベータ 33 クサイGg ガンマ Oo オミクロンDd デルタ Pp パイEe エプシロン Rr ローZz ゼータ Sss シグマHh イータ Tt タウ88 シータ Yy ウプシロンIi イオタ Ff ファイKk カッパ Xx カイLl ラムダ PSps プサイMm ミュー Ww オメガ使われなくなった文字 ディガンマ サンヘータ ショーギリシアの数字スティグマ サンピ コッパ イプシロン は現代ギリシア語ではこの文字を言うが 日本ではe エプシロン のことを指すことがある ラテン文字の U V W Y キリル文字の U Ү Ў はこの文字に由来する ラテン文字のYは本来ギリシア語からの借用語を表記するために導入されたものであることから 近代諸言語でもギリシア語名に由来する名称 または ギリシアのイ を意味する名称で呼ぶ言語も多い 目次 1 音声 2 起源 3 合字 4 記号としての用法 5 符号位置 6 脚注 7 参考文献音声 編集もっとも古い時期には円唇後舌狭母音 u uː を表していたが アッティカ イオニア方言では早くから円唇前舌狭母音 y yː に変化した 1 二重母音ay ey はそれぞれ au eu と発音されたようである 2 oy はもともと二重母音 ou を表していたが 後に長く狭い oː と同音になり 両方をこのつづりで書くようになった さらに狭母音化して uː の音を持つようになったが 古典期の音が oː と uː のどちらだったかは明らかでない 3 現代ギリシア語では単独 または yi で i ay ey hy は後続の音が無声音のときに af ef if 母音を含む有声音のときに av ev iv oy は u をあらわす 起源 編集このy Yは フェニキア文字で半母音 w を表した 𐤅 ワウ に由来する なお古いギリシア文字で w の音を表した Ϝ ディガンマ も同じ文字に由来する フェニキア文字の異体字 ギリシア文字アルファベット表では Ϝがフェニキア文字アルファベット表と同じ位置 eの次 に置かれていたのに対し y Yはフェニキア文字アルファベット表の最後の文字にあたるt タウ の後ろへ付け加えられた 4 極めて古いギリシア文字を含むほぼすべての出土資料にはこの文字が含まれている 僅かな例外としてエジプトのファイユームで発見されたとされる4枚の金属板に刻まれたギリシア文字アルファベット表はtで終わっており 時代不明ながらも母音字yがまだ確立しないギリシア文字のもっとも古い段階を示すものと考えられている 5 1つのフェニキア文字から形の異なる2つのギリシア文字が生まれた経緯については充分わかっていない ナヴェはまず w の字として伝えられて特有の Ϝ の形になった後 ふたたびフェニキア文字が伝えられたという説を述べているが 6 実体のない議論として批判されている 7 古代の文字名称は単に母音を伸ばしたὖ ユー だった 古典ギリシア語では語頭のyには必ず有気記号がつくため 実際のアッティカ名はὗ ヒュー だったかもしれない 8 後に二重母音oi が同音の y に変化し ビザンチン時代の文法学者が両者の区別のためyをユプシロン ὒ psilon 単なるユー と呼んだのが現代の名称の由来である 9 合字 編集 床屋 koyreῖon 現代の標準であるディモティキではkoyreio の看板 正式の書き方ではないが oy は合字で書かれることがある 占星術での牡牛座の記号 に似ている Unicodeにはouの合字 大文字 U 0222 Ȣ 小文字 U 0223 ȣ が存在するが ギリシア文字でなくラテン文字の一種とされている 記号としての用法 編集大文字の Y は 素粒子物理学でボトムクォークとその反クォークからなるウプシロン中間子 b b displaystyle b bar b を表す ただし ラテン文字のYとの混同を避けるために それと解るフォントや表記 ϒ など を使用する 符号位置 編集大文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 小文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考Y U 03A5 1 6 20 amp Upsilon amp x3A5 amp 933 y U 03C5 1 6 52 amp upsilon amp x3C5 amp 965 Y U 038E amp x38E amp 910 y U 03CD amp x3CD amp 973 Y U 03AB amp x3AB amp 939 y U 03CB amp x3CB amp 971 記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称y U 03B0 amp x3B0 amp 944 ϒ U 03D2 amp upsih amp x3D2 amp 978 GREEK UPSILON WITH HOOK SYMBOL脚注 編集 Allen 1987 pp 65 69 Allen 1987 pp 79 80 Allen 1987 pp 75 78 Allen 1987 p 47 Woodard 2004 pp 656 657 Naveh 1987 p 184 Swiggers 1996 p 268 Allen 1987 p 172 Allen 1987 pp 172 173参考文献 編集W Sidney Allen 1987 1968 Vox Graeca 3rd ed Cambridge University Press ISBN 0521335558 Joseph Naveh 1987 1982 Early History of the Alphabet 2nd ed Hebrew University ISBN 9652234362 Pierre Swiggers 1996 Transmission of the Phoenician Script to the West In Peter T Daniels William Bright The World s Writing Systems Oxford University Press pp 261 270 ISBN 0195079930 Roger D Woodard 2004 Greek Dialects The Cambridge Encyclopedia of the World s Ancient Languages Cambridge University Press pp 650 672 ISBN 9780521562560 https ja wikipedia org w index php title Y amp oldid 93807545 から取得, ウィキペディア、ウィキ、本、library、

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